I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
何コール呼び出し音が鳴り響いても電話が繋がる気配はなく、私の額に嫌な冷や汗が流れる。
再度通話ボタンを押して、チラリとフロントガラスを覗けば、先程の黒いセダンが少し先に走っているのが見えた。
まずは、タクシーが目的の車をちゃんと追えているらしいことに少しだけ胸を撫でおろす。
使えなさそうなタクシードライバーではあるが、こうなったらもう彼を信頼する他ない。
「……ったく、凛子さんも何でこんな事件に巻き込まれやすいかなぁ…はぁ~~~~ッ……あ!?三ツ谷先輩!?」
私がそう愚痴を零していれば、数十回呼び出し音が鳴り響いたところで、『おー、藍沢さん。んな慌ててどうしたよ?』なんて三ツ谷先輩の呑気な声が響いた。
「今どこです!?」
「………公園でコンクールの課題?!…こんのバカたれ、そんなの放り投げて今すぐ来てください!!!凛子さんが緊急事態!!!知らない男の車で拉致られた!!!」
「現在地と行き先は随時メールするんで!!!」
そこまで言えば、私は一方的に電話を切り、現在地と今自分たちが向かっている方面をメールに投げた。
「……あ゛~~~~~、ちゃんと間に合ってよ三ツ谷先輩…」
「…あ、あの……警察とか連絡した方がいいんじゃ……?」
「うるせぇ、テメェは黙って前だけ見とけ!!!車見失ったらぶっ殺すかんな!!!」
「…はッ…はいッ!!!」
小さなタクシーの中では、手に汗握るミズキと、ミズキの剣幕に怯えるまだ若いタクシードライバーがいた。