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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



『ミズキちゃんにお礼というか、なんというか…報告しておきたいこともあるし、駅前のカフェででも美味しいモノでも食べない?』

突然昨日かかってきた凛子さんからの電話。

電話越しに聞こえる嬉しそうな恥ずかしそうな声からして、三ツ谷先輩との間にようやく進展でもあったのか、なんて。

少しの胸の痛みを感じながら、私は二つ返事で、凛子さんの誘いを受け入れた。

そして、今。

こうなったら美味しいモノ食べまくって全部奢ってもらお、なんて待ち合わせ場所に向かって歩き出した私の瞳に、目を疑うような光景が飛び込んできた。

少し入り組んだ小道、

背後に立つ男に口元を塞がれながらも、バタバタと涙の形相で必死に抵抗している女の姿と、

やがて抵抗虚しく、ぐったりと頭を垂れた女を抱きかかえて黒塗りの車の中へと乗り込んだ男の姿。

女が誰だかなんて、横顔だってすぐにわかった。

「…え?!凛子さん?!…えッ…ちょッ…タクシー!!!」

咄嗟に歩道のガードレールから身を乗り出して、これでもかと思うほど手を大きく伸ばす。

「あそこ走ってる練馬ナンバーの黒塗りのセダン!後ろ追ってください!」

幸運にもタクシーはすぐに捕まり、私は駆け足でタクシーの後部座席に乗り込んだ。

そして、運転席と助手席の間から身を乗り出して凛子さんが連れ込まれた車を指差す。

「早く!!!悪いけど急いで!!!」

モタついている運転手を急かし、車が走り出したのを確認すると、

今度はカバンの中から携帯電話を急いで取り出し、三ツ谷先輩の番号を探す。

プルルルル…プルルルル……プルルルル……

逸る鼓動の音に、一向に止まる気配のない呼び出し音。

「………もう~~~~~ッ!!!…三ツ谷先輩、何やってんだよ!!!大事な彼女が一大事だっていうのにィ~~~ッッッ!!!」

私の緊迫した声だけが虚しくタクシーの中に響いていた。


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