I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
12/23 14:00
私はお母さんの入院している総合病院前で、タカちゃんのバイクの後ろから腰を下ろした。
「明日何か食いてぇもんとかある?ウチ、オーブンとかないから、あんま凝ったモンは作れねぇけど…」
頭に着けていた少し大きめのヘルメットをタカちゃんに返せば、タカちゃんはそう言って頬をかいた。
明日は早いもので私の誕生日。
タカちゃんの誕生日のお祝いをとても喜んでくれたらしいタカちゃんからの申し出により、明日はタカちゃんの家でお祝いしてもらうことになっていた。
なんてことない日常だけど、そこにタカちゃんが居てくれるって事がやっぱり何よりも嬉しくて、
少し照れたように、優しい瞳でこちらを見つめるタカちゃんがやけに愛しく想えて、
私は頬をふっと緩めた。
「…えー、食べたいものかぁ…タカちゃんが作ってくれたものなら何でも嬉しい!」
「ハハッ、そう言って貰えると俺も嬉しいけど。…でも、マジで何もないの?」
満面の笑みでそう言えば、タカちゃんも嬉しそうに頬を緩めた。
「…んー?…あ、タカちゃんの作ったお味噌汁、久しぶりに飲みたいかも!」
「…は?味噌汁?んなもん、誕生日じゃなくたっていつだって飲めんだろ。」
「それはそうなんだけど…やっぱりタカちゃんのお味噌汁が一番好きだなぁって。」
「ハハッ、マジで?八戒には散々しょっぺぇって苦情言われてんだけど。」
「ハハハッ、それが良いんじゃん。タカちゃんのお味噌汁!って感じがして!」
「ハハッ、何だよそれ。」
そんな他愛もない話をしながら、2人で笑い合う。
このなんてことない一時が、本当に幸せ。
「じゃあ帰り、また連絡してな。」
「うん。いつもありがと、タカちゃん。」
「バーカ、俺がしたくてしてる事だからいーの。」
そう言ってニカッと嬉しそうに笑ったタカちゃんに別れを告げ、病院の入り口へと足を踏み入れる。
不意にチラリと後ろを振り向けば、バイクに跨りながらこちらを静かに見つめているタカちゃんと目があった。
私はもう一度タカちゃんに手を振ると、母の眠る病室へと足を運んだ。