I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
隆くんがいなくなって、シンと静まり返る教室。
” 私は西園寺先輩にタカちゃんを譲るつもりありません。 ”
” どんなことされたって、
世界中に後ろ指指されたって、
私は手放したくないんです。
タカちゃんのことだけは。 ”
数日前に聞いた椿木凛子の言葉が、私の脳裏にふと蘇った。
譲りたくないとか、手放したくないとか
聞いた時は、正直、「アホラシ」って思った。
そんな言葉を並べたところで一体何が変わるって言うの?って。
少なくとも、私の見てきた世界はそんな言葉でわかったって待ってくれるような生易しい世界じゃなかったから。
騙すか騙されるか、
足を引っ張るか引っ張られるか、
這い上がるか蹴落とされるか、
勝ち誇って笑うか破れて病んでいくか…
そんな極端な世界の狭間でいつも私は戦い抜いてきたから。
でも正直、そんなこと言ってくる度胸もない子だと思ってたから、驚いたのも事実。
彼女を動かしている糸だって、もう少しで涙の重さに堪えきれずプツリと切れる頃が来ると思っていたのに。
彼女の真っ直ぐな瞳には、揺るぎない強さだけが静かに燃えていて私は思わず唇を噛んだ。
美しく咲き誇る一輪の花だって、いつかは枯れてゆく。
なのに、彼女が萎れることなく凛と咲いていられるのは何故?
” ………俺、実は心の底から大事にしてぇと想ってる子がいるんだ。 ”
” もしもこれ以上、椿木さんのこと傷付けるってんなら…俺も大事なモン守るために使うよ、力を。 ”
そんなの考えなくたってわかった。
彼女が美しく咲き誇っていられるのは、
紛れもなく “ 愛 ” が彼女の身体中を満たしているから。
私が持っていないものを持っている彼女が、憎い。
私が欲しくて仕方のないモノを身体中に纏わせている彼女が、憎くて憎くて仕方がない。
私を選んでくれない彼が、心底憎い。
私を愛してくれないこの世界が、死ぬほど憎い。
…そうだ、望んだ愛がこの手に入らないなら、もういっその事、壊してしまおう。
大事で仕方のない愛すべき存在を失った時、人は一体どんな表情をするの?
…きっと、それはそれは美しく、さぞかし私の心を満たしてくれるのだろう。
そんなことを思った。