I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「…タカちゃん?……あの…ごめん、携帯電源切ってて着信今気が付いたの……何かあった?……じゃなくて、それもそうなんだけど、ほんとごめん……話したいってメールくれてたのに、シカトするみたいになっちゃってて…」
電話が繋がるとすぐ、私はそう一方的に捲し立てた。
そうすれば、少し間をおいて、タカちゃんの少し低めの声が耳に届く。
『……ん、別にいいよ。何か返事出来ねぇ理由があったんだろ?……ったく、こんな寒い日にどこほっつき歩いてんだよ。』
どこ探しても見つかんねぇから何かあったのかと思って心配したわ
そう言って小さく溜息をついたタカちゃん。
「………え?」
『後ろ見てみろよ。』
タカちゃんの言葉に一瞬動きを止めた私は、言われるがまま後ろを振り向く。
そうすれば、少し後ろから、こちらに笑いかけているタカちゃんの姿が目に入った。
「……どうして…」
「どうしてって、そりゃあアチコチ探し回ったからな。
ぱーとぺーに聞いた墓地とか、椿木さんの家の前とか、お袋さんのいる病院…。
思いつくとこ全部探したけど全然見つかんなくて焦ってたら、ここが頭に浮かんでさ。試しにバイク吹っ飛ばして来てみればビンゴ。」
電話を切ると、驚きと緊張でドギマギしている私の元へとやってきたタカちゃん。
そして、私の横に立つと何を想うのか、工業地帯の灯りを静かにジッと見つめる。
「……全部、聞いたよ。今までされてきた事とか、言われてる事とか。学校裏サイトって奴もようやくさっき見た。」
「…そっ…か。」
暫くして、静かに口を開いたタカちゃんの言葉に、私は一瞬目を見開いた後で、目を伏せる。
そしてまた2人の間を静寂が包み込めば、ザザァー…と時折聴こえてくる優しい波音だけが暗闇の中で響き渡った。
何を言うでもなく、2人静かに、寄せては返す波の様子を眺めること数分。
タカちゃんは意を決したように、遠くを見つめたまま、静かに口を開いた。
「…………俺さ、好きとかそんな言葉じゃ足りねぇくらい大事にしてぇって思ってる子がいるんだ。」
タカちゃんからの突然のカミングアウト。
私の胸はドクンッと大きく波立って、
まるで雷が落ちたような、そんな全身が痺れるような不思議な感覚が私の身体中に広がっていった。