I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「……凛子さん、あんた、ほんとバカヤローですね。」
「…え?何で?!」
真剣な表情でこちらを見つめる凛子さんに私が大きな溜息をつけば、凛子さんは心外だとでもいうような表情を向けた。
そんな彼女にハハッと渇いた笑みをこぼした。
「…私の片想いはもうとっくのとうに終わってるんです。…それに、今は凛子さんのことも好きになっちゃったから、個人的には早く2人には幸せになってもらいたいって思ってんですよね~。」
はーあ、早く私にも良い人出来ないかなぁ~。
なんてぼやけば、凛子さんは一瞬目を伏せた後、
「………じゃあさ、ペー君なんてどう?!私のおすすめ物件だよ?」
なんて言っては眩しい笑顔を咲かせた。
「ペー君って、もしかして手芸部によく顔出して副部長に怒られてる林先輩ですか?」
ナイナイ。そう言って肩を竦めれば、「…えー?ペー君とっても良い子なのに!」なんて言って今度は凛子さんが肩を竦めた。
そして2人で瞳を合わせれば、どちらからともなくアハハハ!と笑い合う。
「……ほんと、ありがとう。ミズキちゃん。」
「…ちょっとちょっと。改まっていきなり何ですかぁ?マジそういうの勘弁。」
昇降口で部活に戻ると言えば、こちらを向いて、少し申し訳なさそうな顔で頭を下げた凛子さん。
そんな凛子さんに笑みを零す。
「…まぁ次、三ツ谷部長のこと悲しませたら、その時は一発ぶん殴られる覚悟しといて下さい。」
そう言ってニカッと笑顔を向ければ、凛子さんは、「ハハッ、やっぱミズキちゃんって元ヤンでしょ~?」なんて言ってクスクスと笑った。
私は、そんな自分の目の前で、鈴が鳴るような笑い声をあげている可愛らしい先輩を一瞥すると、2人の未来に幸あれ、とその場を後にした。
その後、
「……あ、靴なくなっちゃったんだった。えー、裸足で帰んの?…えー……」
とボヤく凛子さんの声が聞こえた気がしたが、それには聞こえぬフリをする。
こっちは2人のためにイイ女演じてやってんだ、その位は自分の力で何とかしやがれ。なんて。
私は零れ落ちた一つの涙を拭うと、大好きな曲を口ずさんで家庭科室まで向かった。
勿論、その後、「遅い!!!」と副部長に怒鳴られたのは言うまでもない。