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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



「…え、ミズキちゃん?」

「ハハッ、どーも。」

「…まさか、また盗み聞きぃ~?…ってことは、またどこかにタカちゃんまでいたりする?!」

もうタカちゃんもミズキちゃんも皆盗み聞きしすぎだよ~なんて、反対側の入り口や階段に続く壁の裏などをパタパタと急ぎ確認しにいく凛子さん。

私はそんな凛子さんの姿に、小さく噴き出した。

「…ちょっと。何笑ってんの、ミズキちゃん。」

「…いやー、さっきの凛子さん、めちゃくちゃかっこよかったなぁって。やっぱ言う時は言う女ですよね、先輩って。」

「………ちょっと、やめてよ、こっちは至極真剣に言ってんだから。」

そうすれば、恥ずかしそうに耳を染めて、少し不貞腐れたように前を歩き出した先輩。

私も先輩の後を続く。

「…………でも、ずっと思ってたんですけど、やっぱもっと三ツ谷部長のこと頼ったらいいんじゃないですか?」

ポツリと不意にそんなことを吐き出せば、凛子さんに言いたい言葉は次々と頭に浮かんだ。

「…迷惑かけたらいいじゃないんですか?」

「………。」

「……そんくらいで三ツ谷先輩が嫌な顔するわけないって、凛子さんが一番わかってるでしょ。」

つま先よりもう何歩か先を見つめながら、静かに私の話に耳を傾けている凛子さんの腕を掴んだ。

「…自分を頼ってくれないってことが…自分に本当の気持ち言ってくれないってことが…いっちばん寂しくて哀しいことなんですよ、あんたを大切に思う人達にとっては!」

そう少し語尾を強めて、凛子さんの瞳をジッと見つめれば、凛子さんの綺麗に澄んだ瞳が大きく見開かれた。

そして、彼女はふわりと微笑むと、

「………ミズキちゃんはさぁ、本当にタカちゃんのことが好きなんだね。」

そう言った。

「…は?!…な、に言って…」

驚いた私横目に、クスクスと口元に指先を当て楽しそうに笑う凛子さん。

「…えー?そんなの一緒にいればすぐにわかるよ。同じ人に恋心抱く身としては余計に。」

そう言うと、凛子さんは少し困ったように眉を下げ、苦笑する。

そして意思のこもった瞳がこちらを射抜く。


「……でも、ごめんね。タカちゃんのことは、ミズキちゃんがどんなにいい子ってわかってても、もう誰にも譲れないんだ。」

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