I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
その場で思わず大きな笑い声を上げれば、傍にいた下校前の生徒達が驚いた様子でこちらを見たあと、ヒソヒソと何かを会話しながら私の傍を通り過ぎた。
でも、そんなことはもうどうでもよくて。
私は上を向いて、ただひたすらに笑い声を上げた。
そして、薄っすらと瞳に溜まった涙を拭うと、再び教室へと踵を返す。
誰もいない教室、
自分の席の机に腰掛けて、直にやってくるであろう待ち人を待った。
今頃、家庭科室にでも顔を出しているかもしれない彼女を。
そうして私は暫く何をするでもなく、ぼんやりと窓の外で綺麗に染まっていく夕焼けの様子を眺めていた。
彼女と私の冷戦に終止符が打たれることはないのかもしれないけど、
今、ここで、
彼女に対して、どうしても言っておかなければいけないことがあった。
「…………は?」
「…やっぱり来た。絶対来ると思ってたんです。西園寺先輩。」
不意に響いた教室の扉を開く音。
そして漂ってきた嫌に鼻にまとわりつく蜂蜜みたいな甘い香り。
そんな香りに、にこりと笑顔で振り向けば、本日の待ち人である西園寺先輩が驚いた顔をしてそこに立っていた。
「…まるで、『私がここで待ち伏せするような勇気があるとは思ってなかった』みたいな顔してますけど、放課後誰もいない下級生のクラスで一体何をしようと思ってたんですか?」
私がそう言えば、一瞬眉を顰めた先輩。
そして再び綺麗な笑顔を作ると、
「…え~何々?怖いんだけどぉ。隆くんの忘れ物取ってきてってお願いされたから取りに来ただけなんだけどな。」
なんて言って困ったように笑って見せた。
「…へえ、そうですか。…じゃあその忘れ物、私がタカちゃんに届けるんで先輩は帰ってもらっていいですよ。丁度タカちゃんに話さないといけないことも謝らないといけないことも沢山あったんです。」
そう言って笑えば、あからさまに顔を強張らせた西園寺先輩。
私はそんな先輩のことをじっと見つめると、
「……それでね、西園寺先輩。
先輩にも言わなきゃいけないことがあってですね、聞いてくれます?大丈夫、忙しい先輩の貴重な時間はほんの少ししか取りませんから。」
なんて言って、口を開いた。