I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「………そんなの、優しい隆くんらしくないじゃん。…詩織はそんな台詞聞きたくないし、聞くつもりもない。」
「それじゃ。」そう言って、私は電話を強引に切ると、バッグに携帯を勢いよく投げつけた。
「…ん~、詩織ちゃん、どうかした?」
そう言って腰に手を回してきた男の手をバシンッと振り払う。
「……帰る。今そういう気分じゃない。」
そして、服を乱雑に羽織って、勢いよくその場を後にすれば、ボロボロと自然と涙が零れ落ちた。
「……どうして、いつも私だけ…。」
” あんたなんか生まなきゃよかった ”
” 女なんだから色仕掛けするとか腰振るとかいくらでも金なんか稼げんだろ。わかったら早く外行っていい男でもひっかけて来い。 ”
” え?詩織のすっぴんってそんな感じなの?超ウケんだけど!ブスすぎ! "
” お前、悪いけど俺の前ではずっと化粧しててくんね?こんなブスだと流石に萎えるわ。ほら、仕方ねぇから後ろ向いてケツ突き出せよ。 ”
過去に言われたそんな耳障りな言葉達が、ただ涙に溺れそうな私の目の前を再び通り過ぎていく。
いつだって誰かに愛されてみたいだけだったのに。
別にそんなに多くのことなど望んじゃいない。
ただ、ありのままの私を大切だと言ってくれる、そんな誰かに夢見てただけなのに。
” あれ、お兄ちゃん、凛子ちゃんは?”
” マナ、凛子ちゃんがいい! "
” ………俺、実は心の底から大事にしてぇと想ってる子がいるんだ。"
どうして私じゃダメなの?
こんなに努力して手に入れた美しい容姿なのに、
生活費を稼ぐために涙をのんでまで身に着けた笑顔なのに、
どうして、結局、私は誰にも必要とされないの?
どうしてあの子じゃなきゃダメなの?
渋谷のど真ん中、私は独り、行き場を失って涙を流した。
でも、
こんなことで、ただ守られてきただけのような女に怯むほど私は甘い育ちじゃあない。
彼女さえ居なければ…そんな考えが頭をよぎった。
深呼吸をして涙を拭うと、唇を噛みしめて、再び前を向いた。