I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
広いベッドの中で、ふと、そんな彼との出逢いを懐かしく想い返していれば、不意に着信を知らせる音が鳴り響く。
細い自身の身体に巻き付いた、太い男の腕を払って、通話ボタンを押せば、『…あ、詩織さん?』と意中の彼の声。
「隆くん?どうしたの?さっきはありがとう、とっても楽しかったよ♡」
正直、今日の出来事は全然愉快な気分にはなれなかった。
けれども、電話口の向こうの彼に努めて明るくそう声をかければ、私と隆くんの間には暫しの沈黙が流れた。
「…どうかした?」
自分から電話をかけてきたくせに、黙り込む隆くんに私は嫌な予感がした。
……" 捨てられる " 予感。
この沈黙は嫌になるほど、身に覚えがあったから。
『…あの…さ、やっぱ俺、どうしても詩織さんに伝えとかなきゃいけねぇことがあってさ。』
言葉を慎重に選んでいるのか、ゆっくりと喋り出した隆くん。
『………俺、心の底から大事にしてぇと想ってる子がいるんだ。……だから、その…こういうこと言うのもおかしな話なんだけど……』
「……私とはもう会わないって、私なんか要らないって……もしかして、そう続けようとしてる?」
……え?と電話口から隆くんの驚いたような間抜けな声が響いた。
あぁ、誰にでも優しい彼も結局はみんなと同じだったか、なんて。
小さな溜息が零れた。