I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
病院の前で三ツ谷くんを待っていれば、暫くしてバイクに跨った三ツ谷くんが現れた。
「悪ぃ、待った?」
「ううん、全然!まだ明るいし、迎え来なくても大丈夫だったのに。」
そう言えば、三ツ谷くんは「バーカ。俺がやりたくてやってるからいいんだよ。」と言ってニカッと笑った。
そして、自分の首元につけていたヘルメットを私によこす。
「…じゃあお言葉に甘えて。」
受け取ったヘルメットを被り、数日ぶりに三ツ谷くんの後ろの席に跨る。
バイクに乗るのは2回目、まだあのスピード感とカーブの時に身体が傾く独特の感覚に慣れなくて少し怖いななんて思いながら、三ツ谷くんの腰に腕をまわす。
それを確認すると、三ツ谷くんは「よし、行くか。」と言って、何度かエンジンをふかした後でゆっくりと走り始めた。
高速で移動していく色鮮やかな景色と頬を撫でる爽やかな風、それから自分よりも一回り大きな頼もしい背中、三ツ谷くんから香る少し甘い香り。
前回乗せてもらった時には緊張と恐怖で気が付かなかったあらゆる感覚が、まるで一気に押し寄せてくるようだった。
「…のわぁぁああああ!!!」
とは言っても怖いものは怖いんだけど。
三ツ谷くんがスピードを落とさずにカーブを曲がるので、びっくりして自分でも驚くほど大きな叫び声が出た。
「ははっ、なんだよ、その間抜けな声ー!」
すると前方から明るい声が聞こえてくる。
「だって、この前はこんな曲がり方しなかったじゃん!死ぬかと思ったじゃん!!」
「こんなことじゃ死なねぇよ。まぁ死にたくなかったらちゃんと捕まっててな!」
楽しそうな三ツ谷くんに精一杯の非難を浴びせれば、彼は変わらず楽しそうに笑っていた。
そんな三ツ谷くんにつられて、笑みが一つ零れる。
「…三ツ谷くんの後ろなら悪くないかもなぁ」
なんて、不意に零れた小さな声は、頬を撫でる乾いた風にかき消された。
私は大きな三ツ谷くんの背中から伝わる体温が心地よくてそっと瞳を閉じた。