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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



おもむろに布団から身体を起こせば、部屋の壁に貼られた俺の大好きな笑顔で笑う椿木さんの写真が目に入る。

誰といたって、脳裏には椿木さんの姿が浮かんでしまうのに。

どこにいたって、椿木さんの声を、香りを、温もりを探してしまうのに。

椿木さん以外の誰かをすきになるなんてこと、

「……そんなこと、あるわけねぇのに。」

ざまぁねぇな、ほんと。なんて。

自嘲する乾いた笑いが静かな部屋に響いた。


今日だって、

俺の傍にいるのが椿木さんだったら、なんて、一体何度考えたのだろう。


詩織さんと椿木さんを比べて、何度瞳をそらしたのだろう。


高そうなケーキと、俺の誕生日に食べた椿木さんの手作りのケーキ。

困ったように「野菜が苦手」と零した言葉と、何を口にしても嬉しそうに「美味しい」と零す言葉。

作り物のような綺麗な笑顔と、目を細めてふわりと笑う柔らかい笑顔。

携帯片手に忙しそうに指を動かす彼女の姿と、楽しそうに皿を机に運んでいく椿木さんの姿。


重ならない2つのシルエットに、何度溜息を零しただろう。


結局のところ、

椿木さんが俺の事を求めているかとかそんなことは然程重要じゃないのかもしれない。

なんでかって、そりゃあ

俺に、椿木さんという唯一無二の存在が必要なのは間違いなくて。

俺が心の底から椿木さんだけを求めているってことは間違いなくて。

俺の傍にはいつだって、この世でたった一人、椿木さんだけが傍に居て欲しい。

それだけは誰に何と言われようが揺るがない、俺の真実なんだから。


だから、


例え、2人の間に埋まらない距離があったとしたって

もしも、伸ばした手を振り払われたとしたって

俺は何度だって、この声の限り君の名前を呼ぶよ。

何度だって君を強く抱きしめるよ。


溢れんばかりの想いを、言葉を、愛を、
ギュッと感じてくれりゃそれだけでいいから。


いつの間にか身動きが取れないほど、幾重にも絡みついてしまった鎖。

そんなものは今すぐにでも断ち切って、この長くて暗い夜を打ち砕いてやろう。

世界で一番大事にしたくて、欲しくてたまらない君を、ギュッと強く抱きしめるために。


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