I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
三ツ谷がビーフシチューや白飯をよそった器をテーブルにテキパキと運んでいけば、テーブルの横に座り、携帯片手に何やら忙しそうに指を動かしている詩織の姿が目に入った。
机に皿が並んでいく様子を、長い睫毛を瞬かせて見つめる詩織。
「わぁ、ビーフシチュー?美味しそ♡………あ、でもどうしよ、ごめん。詩織、野菜苦手なんだ……。」
そして、目を輝かせたと思いきや、ビーフシチューの中の具を指差すと困ったように笑ってみせた詩織。
三ツ谷はそんな詩織の姿に、「…あー、マジか、ごめんな。そしたら、中の野菜だけ今取り除いてくるわ。」と言うと苦笑した。
「お兄ちゃんヒドイ!ルナ達には人参も食べろってうるさいのに!」「のに!」
「お前らはまだガキだからダメ。好き嫌いしてたら、プリキュアとか椿木さんみたいにはなれねぇぞ?いいのか、お前らの大好きな椿木さんみたいになれなくても。」
「やだ!凛子ちゃんみたいになる!」「マナも!」
「ハハッ、じゃあ人参も残さず食わねぇとな。」
うん!と笑顔でスプーンを握って人参を口に加えだした三ツ谷の妹達と、2人の頭を優しく撫でた三ツ谷。
詩織はそんな三ツ谷家の日常の会話に、内心穏やかでない気持ちを隠すように微笑んだ。