I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
そんなこんなで詩織を連れて、キッチン兼居間に三ツ谷が踵を返せば、
「あれ?お兄ちゃん、凛子ちゃんじゃないの?」
「マナ、凛子ちゃんがいい!」
と三ツ谷の素直な妹達は悪びれもなく高らかな声を発した。
あぁ、子供というのは何と残酷で素直な生き物なのだろう。
三ツ谷は内心そんなことを嘆きながら2人に苦笑を零す。
「椿木さんとは暫く遊べねーってこの前言ったばっかだろ。…それに兄ちゃんの先輩にお前ら失礼だぞ。…悪ぃな詩織さん。コイツら、妙に椿木さんに懐いててさ。」
三ツ谷がそう詩織の方にハハッと頬を掻いて笑えば、
「…お兄ちゃんだって、凛子ちゃんのこと大好きじゃん!お兄ちゃんの部屋に凛子ちゃんの写真沢山張ってあるじゃん!」
なんて、長女のルナが騒ぎ出して、三ツ谷は思わずルナの口を手で覆った。
「…バカッ!…ルナ、お前…それは内緒にするって約束だろ……」
「お兄ちゃん浮気?浮気反対!」「浮気!」
「…ったく、お前ら、どこでんな言葉覚えてきたんだよ。…ごめんな詩織さん。コイツらのことは気にしないでいーから。」
「あはは、大丈夫大丈夫!初めて会うから緊張するよね、ごめんね。」
詩織はそんな三ツ谷と妹達との会話に一瞬顔を強張らせるも、すぐに綺麗な笑顔を張り付ける。
「ルナちゃん達と一緒に食べようと思って、お姉ちゃんケーキ買ってきたんだ。後で一緒に食べよ?」
そう詩織が笑えば、三ツ谷の背後に隠れるルナとマナ。
「…ほら、お前ら、こういう時は何て言うんだ?」
三ツ谷がそう言えば、2人は詩織をジーッと伺うように見つめた後で、「「……ありがと、お姉ちゃん。」」と小さく呟いた。
「どういたしまして。」
綺麗な笑顔で笑う詩織の姿に、三ツ谷は内心ホッと胸を撫でおろす。
しかし、その美しく整った笑顔がどうも冷たく凍てついた笑顔のように瞳に映ってしまい、三ツ谷は思わず目をそらす。
そして、おもむろに立ち上がるともう盛るだけの料理を器によそるために立ち上がった。