I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
お風呂に入ってからテレビをぼんやりと見ていれば、ウォンウォオンッとタカちゃんのバイクの音が聴こえてきた。
時計を見れば、21:00を少し回ったところで。
今日は集会帰りだったのかな、それとも西園寺先輩とどこかで遊んできたのかな、なんて。
そんなことを考えれば、私は大きな溜息をついた。
元よりグチャグチャになった心で眺めていたテレビなんて、内容なんか耳に入って来ていない。
リモコンを取ると、楽しそうに笑うタレント達の姿を一目見てから、テレビの電源を切った。
手に持った冷めきった紅茶を一口すすれば、飴色の澄んだ水面で物憂げな顔をした自分が私を見つめ返していた。
タカちゃんに嘘をついて、タカちゃんと距離を取ってから早1週間。
タカちゃんやルナちゃんマナちゃんがいない夜は、怖いほどに静かだった。
どんなに美味しそうなご飯を食べたって1人で食べる夕飯は面白いほどに美味しくなくって、大好きな音楽番組を見ていたって一人で見るそれは驚くほどにつまらなくって。
1人の夜とは、こんなにも孤独だったのだろうか。
私はぼんやりと窓の外で輝く月を眺める。
お姉ちゃんとユキがいなくなって、お母さんがあんな状態になって、お父さんとは離れて過ごす日々。
タカちゃんと出逢うまでの私は、どうやって寂しい夜を乗り越えてきたのだろう。
どうやって独りの夜を過ごしたのだろう。
そんなことすら思い出せなくなるほどには、気が付いたらタカちゃんに依存していた。
自分から離れておいて、寂しいなんて、なんて勝手な話だろう。
抱いた膝に顔を埋めれば、不意に来訪者を告げるインターホンの音が鳴り響いた。
「やっほー、凛子ちゃん、ウチ。へへっ、遊びに来ちゃった♡」
こんな時間に一体誰がと思ってインターホンの画面を覗けば、画面越しに、向日葵みたいな笑顔を綻ばせているエマちゃんの姿が見えた。