I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「…まぁ、何か気になることがあんなら本人に直接聞いてみんのが一番早ぇだろ。」
「……そうだな。」
やっぱ本人に聞いてみるしかねぇよな、なんて俺は小さく零して、再びアクセルを握った。
ひょっとして俺の椿木さんへの想いが重すぎて、椿木さんが若干引いてる…とか?
「…はあ~~~~~……しんど。」
夜空に再び大きな溜息をついた時、後ろから鈴のような甘い声が響いた。
「…隆くん?」
「…え…詩織さん?」
「わぁーやっぱり隆くんだぁ♡特攻服かっこいい~♡」
聞き慣れた声に後ろを振り向けば、サラサラと綺麗なストレートヘアーを靡かせた詩織さんが歩み寄ってきた。
突然の詩織さんの登場に驚く東卍のメンバー。
「……アンタ、三ツ谷の知り合い?」
いつの間にかマイキーの後ろに乗っていたエマが、こちらをジッと見つめる。
「わぁすごーい♡これって前に言ってたチームの集会?女の子もいるんだね、びっくり~!」
エマの探るような鋭い視線を知ってか知らずか、ニコニコと綺麗な笑顔で自己紹介する詩織さん。
「…へえ、何か見たことあるなぁって思ったら、eggによく出てる子…で、三ツ谷と同じ中学。…へえ。」
「…おい、エマ。初対面なのに何だよその態度。一応、お前の2つ上だぞ!」
「……はぁ?だから何?別にウチは普通だし。」
詩織さんのことを上から下まで眺めると、何が気に入らないのか不機嫌な表情でつまらなそうに携帯をいじりだすエマ。
そんなエマに苦笑しながら、「…こんな時間に何してんの。危ねぇじゃん。」なんて詩織さんの方を見遣る。
そうすれば詩織さんは、撮影帰りでたまたま通りがかったのだと言ってふわりと笑った。
俺は、そんな詩織さんに溜息を一つついて、「後ろ乗んなよ。家まで送ってく。」と言ってメットを渡した。
「え?いいの?バイクの後ろ乗るの夢だったんだ、やったぁ♡」
詩織さんは俺のメットを受け取ると、嬉しそうに後ろに跨る。
そんな俺らの様子をエマは、面白くなさそうにジッと見つめていた。
エマが何を言いたいかなんてのは想像するに容易だ。
でも流石に、帰る方面も一緒の知り合いを放置して帰るわけにも行かねぇだろ。
俺は仕方なく、椿木さんのものとは違う、少し癖のある甘美な香りを纏った後ろの彼女を乗せたまま、アクセルを回した。