I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「…いや、別にそんなんじゃねぇけど。」
場地の言葉にぶっきらぼうに小さく呟けば、「じゃあそんなしけたツラしてどうしたって言うんだよ」と場地が首を傾げる。
俺は、こちらを伺うようにジッと見つめる東卍の面々にふぅーと小さく息をつくと、
「…暫く椿木さんの飯食ってねぇってのは、単純に椿木さんの父親が暫く帰って来てるみてぇだから、これまでみてぇに一緒に飯食ったりしてないって、ただそれだけ。」
と言って苦笑した。
「……三ツ谷。…お前、もしかして父親に嫉妬してんの?」
「…バカヤロー、んなわけあるか。」
俺の言葉に、たい焼き片手に口をあんぐりと開けたマイキー。
そんなマイキーの言葉を一蹴すれば、今度はドラケンが「…何だよ、水臭ぇな。俺らにも言えねぇことか?」と単車にもたれてこちらを見つめる。
俺は暫く考え込んだ後、観念したように口を開いた。
「………よくわかんねぇんだけど、距離置かれてる気がしてさ。」
ハハッ、ほんとダセェな、俺。
そう自嘲すれば、「…あ?距離置かれてる?凛子ちゃんに?」と、まるで有り得ねぇとでも言いたげなドラケンの顔が目に入った。
「…おう。」
「そりゃまたいきなりどうして。お前何かしたの?」
「…いや、そんなことした記憶ねぇから困ってんだよ。」
俺は大きな溜息をつきながら、先日突然鳴り響いた椿木さんからの電話の件を思い返す。
『…もしもしタカちゃん?…ごめん、暫くお父さんがこっち帰ってくるって言っててさ、当分一緒にご飯とか食べれなくなっちゃうかも。…その…病院にお迎えとかも暫く大丈夫だから。』
暫く家を空けていた父親が帰ってくるにしては嬉しくなさそうな声。
大丈夫、そんな彼女の口癖がやけに耳に残っていた。
「…なーんか、また一人で抱え込んでる気がすんだよな。…まぁそんなん今始まったことじゃねぇけど。」
「…お前、もしかして、彼氏になるとかすっ飛ばして、あんなことやこんなこと無理やりしちゃったんじゃねぇの?…そりゃお前が悪ィよ。」
「あぁ、そりゃお前が悪ィ。」
「…マイキーと場地はとりあえず一回黙ってて。」
真剣な俺と対照的に、アホな事を言い出したマイキーと場地。
そんな2人を一喝すれば、どうしたんだろうな、なんて真剣な顔でドラケンは唸った。