I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
『…隆くんって、学校だとクールに見えるじゃん?でも、あー見えて結構積極的なところあるっていうか、2人の時に急に男の子出してきたりするから、結構ドキドキしちゃうんだ。』
そう続けられる先輩の意味深な言葉に、ドクンッドクンッと私の心臓は嫌に大きく音を立てた。
『……それって西園寺先輩と三ツ谷君って、もう付き合ってる…ってことですか?』
恐る恐るそう口にすれば『ん~…もうちょっとって感じかな』と西園寺先輩は微笑む。
『…だから、応援よろしくね!』
じゃあまた!そんな自分勝手な台詞を吐き捨てて、家庭科室のある方へ駆けていく西園寺先輩。
私はそんな西園寺先輩の後ろ姿を、ただ茫然と眺めることしか出来なかった。
ただでさえ落ち込んでいたところに追い打ちをかけるように響いた西園寺先輩の言葉。
甘い蜂蜜みたいな先輩の綺麗な瞳と笑顔を思い出しては、再び深い溜息が零れた。
彼女の言葉が意図する事がどんな事を指すのかくらい、恋愛に疎い私でも想像するには難しくない。
でも、タカちゃんがそんなことをするのは、きっと私だけ。
知らないうちにそう思いたい私がいたんだと思う。
きっと結局のところ、今の今まで、
タカちゃんに一番近い女の子は私だと
だからどんなにタカちゃんが女の子にモテてたって、告白されてたって、きっと大丈夫だと
そう無意識のうちに驕っていた自分がいたのだろう。
だから今、こんなにも胸が痛い。
ひょっとしたら、甘え下手で頑固な私にとうとう嫌気が指したのかもしれない。
『…俺が詩織さんと2人っきりで出かけること、椿木さんは何とも思わねぇのかなって。』
タカちゃんはどんな気持ちで、その言葉を口にしたんだろう?
あの時、行かないでほしいって、そう伝えていたら、今頃どうなっていたんだろう?
体育祭で倒れた私を優しい瞳で見つめるタカちゃんに、
そうだよ、私のすきな人はタカちゃんだよって、そう伝えられていたら、こんなにも辛い想いしなくても済んだのかな?
思えば、西園寺先輩は私とは似ているようで真逆の人だから。
素直に自分の気持ちを言えて、辛い時や悲しい時は可愛く人に甘えることが出来る、
やっぱり先輩のそういうところを可愛いって思ったりしたのかな、なんて。
私は悪循環な思考に溜息をつくと携帯を手に取り、タカちゃんの番号を探した。