I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「三ツ谷くん、今日は色々本当にありがとう。」
「ん、大したことしてねぇよ。困ったことあったらいつでも言ってよ。」
しばらくして、そろそろルナマナも心配になってきたため、椿木さんと一緒に片付けを済ませると帰宅することにした。
椿木さんは玄関先で「本当にここまででいいの?なんかごめん。」なんて零す。
「はは、すぐそこだし。それに、女の子に送られるわけにもいかねーだろ。」
そう言って笑えば、椿木さんは苦笑した。
「…あ、そうだ。連絡先交換しねぇ?まー家も席も近くだからいらねぇかもしんねぇけど、いつもお互い家にいるわけでもないしな。一応。」
「わかった、今携帯持ってくるから少し待ってて!」
俺は、そう言って部屋に戻り、また玄関先まで戻ってきた椿木さんと連絡先を交換したのち帰路についた。
帰路と言っても、真向いなので、2分もあれば自宅のドアの前。
鍵を差し込みドアを開け、もう一度椿木さんの家のほうを顧みれば、驚いたことに椿木さんがベランダからこちらを見つめていた。
そして、” おやすみ ” と口を動かしたあと、小さく手のひらをふった。
そんな彼女の姿がいじらしくて、俺は頬を緩めた。
あぁ、この気持ちを一体何と形容すればいいのだろう。
ルナマナに感じるそれと似たような少し違うような、
その気持ちの名前を成長途中の俺はまだ知らない。
ただ、
「……なんか…守ってやりたくなる子だな。」
そう思った。
まだこちらに手をふっている椿木さんに、俺もおやすみと手を振り返してから家の扉をくぐった。
部屋に戻ってみれば、ルナとマナは遊び疲れたのかおもちゃを散らかしたまま眠っていて、俺はほっと心を撫で下ろす。
散乱した部屋を少し片付けて、ルナマナに布団をかけてやりながら、今日の出来事を思い返した。