I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
何だかそんな一つ上と思われる彼女達の姿に溜息が溢れる。
「……へえ、私はてっきり三ツ谷君に振られた腹いせとか、そんなんじゃないかなぁ~って思ったりしたんですけど。」
自分でも驚くほど少し意地悪な言葉が口を割って出る。
そうすれば、反撃されると思っていなかったのか大きく目を見開いた先輩達。
「なんだ、やっぱり私のこと知ってての行動じゃないですか。………それで?私に八つ当たりして、少しは失恋の痛みも晴れました?」
「……あんた、ほんとっ…調子のんのも大概にしろよ?!」
私の言動が気に入らなかったのか、手に持っていたホースを地面に放り投げると、こちらに振りかぶる中心に立つ先輩。
そして、静かな中庭にバチンッと乾いた音が響いた。
「…いったぁ。」
私は盛大な平手打ちを食らって痛む頬をさする。
「……あんたみたいな子、三ツ谷君の側にいるのに相応しくないのに!…なんで!」
真っ赤な顔をして息を荒くしている名も知らぬ先輩の言葉を黙って聞いていれば、自然と笑いが零れた。
三ツ谷君の側にいるのに相応しくない?
先輩は、私達の何を知ってるんですか?
なんて。
「…何笑ってんだよ!このメス豚!!!」
そして先輩がそう言ってまた私に掴みかかろうとした時、目の前の先輩を頭上から大量の水が襲った。
「……は?」
「…え。」
突然の出来事に、その場にいた全員が驚いて上を見上げる。
そうすれば2階の女子トイレと思われる場所の窓枠に、バケツ両手にこちらを見つめる女子生徒の姿があった。
「…うわぁ~、あまりにも悪臭がするんでゴミ捨て場かと思ってバケツの水捨てちゃったわぁ。まさか、そんな臭いトコに人がいるなんて思わなくて…どうもスイマセ―ン。」
私はそう言って眩しい笑顔で笑った名も知らない女子生徒に目を奪われる。
新たな名も知らない女子生徒の更なる追加登場と、上級生に水をかけられた先刻の出来事を模したような彼女の言動を前にして、私は沸々と込み上げてくる笑いが抑え切れない。
「…あれ、よく見たらやっぱ人じゃなかった、ただのメスゴリラだった。」
挑発するようなそんな女子生徒の言葉に、先輩の肩はワナワナと震え出す。