I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
掃除をすればスッキリするかと思いきや、職員室のピカピカに磨き上げられた窓とは対照的に、私の心は未だモヤモヤとした埃に覆われていた。
掃除を終えてタカちゃんと待ち合わせた校門へと足を向ける途中、私は昼休み終わり間際に聞こえてきた優美ちゃんとタカちゃんの会話を思い出す。
『…まぁた三ツ谷くん、呼び出し?今月何回目よ。』
『ハハッ、どーだろ。…4回目…とか?』
『…うーわ、ほんと罪な男だね、君は。』
…タカちゃんがモテるのは知っていた。
だって、あんなに素敵な男の子だもん、放っておかれる方がおかしい。
でも、上手く言葉に表せないけれども、
” すき ” だと簡単に言えてしまう、そんな女の子達に嫉妬していた。
タカちゃんを知れば知るほど、距離が縮まれば縮まるほど、” すき ” だなんて一言で、この気持ちをまとめることは出来ない気がしていたから。
…それに加えて、西園寺先輩も彼氏と別れたなんて衝撃発言を言い放つ始末。
優美ちゃんが言うように、きっと西園寺先輩もタカちゃんのことが ” すき ” なのだろう。
西園寺先輩が、一体どの瞬間にタカちゃんに惹かれたのかはわからない。
でも、あんな細くて綺麗で華もある人(それに有名な読者モデル)、私なんかが敵う相手だとは到底思えなかった。
私の恋路も中々前途多難だなぁ、なんて他人事のように大きな溜息をつけば、真横から突然、物凄い勢いの水しぶきが私を襲った。
「………は?」
ぽたり…ぽたり…と視界を通過する水雫。
突然の事件に驚きながらも、ゆっくりと水源を目で辿っていけば、植木に水をあげるホースを手にした女子生徒とその両脇で意地悪い笑みを浮かべた女子生徒達の姿が目に入った。
「…うわぁ、存在感薄くて、そんなトコに人がいるなんて思わなかったぁ。ごめんごめーん。」
目と目が合えば、ホースを手にした女子生徒が口を開く。
両脇の女子生徒達は意地悪な笑みを口元にたたえてクスクスと笑みを溢した。
「………どうしてこんな事するんですか?」
名前も知らない彼女達にそう声をかければ、彼女は哀れなものを見るように眉を顰める。
「だから、あんたの事が目に入らなかったからだってば。あまりにも色白で幽霊かと思って〜。」
ねえ、と周囲の取り巻きに同意を求めると、ケラケラと笑いだした取り巻き達。