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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



「…あー、詩織さん。めっちゃ興味あるけど、今日は先約がいるんだ。ごめんな。」

タカちゃんにとって魅惑的な誘いにタカちゃんが何と返事をするのか内心ドギマギとしていれば、タカちゃんは先約という言葉で先輩の誘いを断った。

ただ先に約束をしたというだけなのに、先約という響きが、ある種特別な約束のように聞こえて、私はホッと胸を撫でおろした。

しかし、西園寺先輩は「…そっかぁ、残念。」と言った後も尚、言葉を続ける。

「…実は関係者限定の展示会なんだけどね、この前仕事してたらたまたま2枚チケット貰えたから隆くんと一緒に行ければと思ってるんだ…。今週の土日とかも予定ある感じ?」

「…え、そんなレアなチケット、俺が貰っちゃっていいの?……てか、詩織さん、彼氏いんだろ。彼氏と行きなって。」

「………いやぁ実は、この前結局、彼氏と別れちゃってさ。…それにどうせ行くなら、本当にシャネルの良さわかってくれてる人と行きたいじゃん!…ね、お願い!」

少し困ったように頭を掻くタカちゃんと、そう言って上目遣いでタカちゃんを見つめる西園寺先輩。

そんな西園寺先輩の姿を見てタカちゃんは困ったように笑った。

そして、西園寺先輩の可愛い視線に負けたのか暫く考える素振りを見せたあと、「…まぁ週末なら空いてるけど。」と観念したように言葉を吐き出す。

タカちゃんの返答に機嫌を良くした西園寺先輩は、嬉しそうに満面の笑みを浮かべては、

「やった!じゃあ今度の土曜ね!詳しいことはまたメールで!♡」

と言って鼻歌交じりに教室から去っていった。


仕事で手に入れた関係者限定のチケット

タカちゃんの尊敬してるシャネルの展示会

彼氏と別れた読者モデルの西園寺詩織という見目麗しい女性


会話から聞こえてきたいくつかの言葉が、私の脳内をグルグルと駆け巡った。

なんか、そーゆーのずるいな…なんて。
私は、モヤモヤと渦を巻く不快な感情に苛まれながら教室を後にした。

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