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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



「…まぁた三ツ谷くん、呼び出し?今月何回目よ。」

「ハハッ、どーだろ。…4回目…とか?」

「…うーわ、ほんと罪な男だね、君は。」


ある日の昼休み、音楽室から教室へと戻ってくれば、優美ちゃんとタカちゃんが窓際でそんな会話をしていた。

2人の会話に耳をひくつかせるも、西園寺先輩がタカちゃんの側にいない、その事実にまずは胸をホッと撫でおろす私。

タカちゃんはそんな私が教室に戻って来たのに気が付くと、窓に預けていた背中を離し、こちらへとやって来た。

「椿木さん。」

「…嬉しそうな顔して何かあった?タカちゃん。」

「…え、俺、そんな顔に出てる?…いや、実は顧問の都合で今日の部活なくなったんだけどさ、椿木さんが良かったら一緒に帰れねーかなって思って。」

そうお誘いの言葉を口にして、はにかんだタカちゃん。

予想外の提案に少し目を瞬かせた後、私が了承の意を示せば、タカちゃんは「んじゃ、放課後の掃除が終わり次第、校門集合な!」と眩しい笑顔を咲かせた。

そして午後の授業開始を知らせるチャイムが鳴れば、タカちゃんは自席へと戻っていく。

私は教科書を机の中から出しながら、放課後一緒に帰るなんて久しぶりだな、なんて考えては頬を緩めた。


そうしてあっという間に授業は終わり、帰り支度を整えていれば、今、最も会いたくない人物と言っても過言ではない西園寺先輩が教室に顔を出した。

キョロキョロと教室内を見渡すと、タカちゃんを見つけて嬉しそうにタカちゃんの席の方へと駆けていく。

「ねね、隆くん。今日部活なくなったって聞いたんだけど、もしかして暇だったりしない?」

後ろ耳に聞こえてきた、先輩の甘い声。

「私も今日撮影とかなくて、今銀座でやってるシャネルの展示会とか一緒に行けたらなって思って♡…前にシャネル好きって言ってたよね?」

タカちゃんの好きな ” シャネル ” という言葉に私の耳は素早く反応して、心臓は嫌な音を立てた。

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