I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
その日の夜、病院帰りに三ツ谷家に顔を出せば、少し低いローテーブルの上には、一人前の食事がラップをかぶって綺麗に並べられていた。
一緒に添えられたチラシの裏を使ったメモ用紙には、
『味噌汁と飯は適当に盛ってな。椿木さんの元気が出るように今日はスタミナ飯!』
と、無骨な文字が書きなぐられていて、
会話がちょっと減ってしまった最近、
それでも私のことを変わらずちゃんと見てくれているんだなって
そんなタカちゃんの優しさに、どういうわけか涙が一つ零れた。
「…凛子ちゃん、どうしたの?どこか痛いとこある?」「痛い?」
それを見ていたルナちゃんとマナちゃんが、心配したのかぎゅっと抱き着いてくる。
「…ううん、ごめんね、どこも痛くない!……隆お兄ちゃんって優しいなって思ったら感極まっちゃって。」
さ、お味噌汁とご飯盛ってこようかな。なんて涙をぬぐって2人の頭を撫でてやれば、2人は安心したように笑う。
久しぶりに口にしたタカちゃんのしょっぱいお味噌汁を飲めば、また目頭が熱くなるのを感じた。
夕飯を取り終えた私は、ルナちゃんとマナちゃんと一緒にお風呂に入り、タカちゃんの作ったお人形で2人と一緒に遊んだ。
そして、時計の針が21:30をまわれば、遊び疲れた2人が目をこすり出したので寝室へと連れていき、3人寝転んでシンデレラなんかを読み聞かせてやる。
そうすれば、2人はすぐにスヤスヤと夢の中へと落ちていった。
「…可愛いなぁ。」
タカちゃんよりも少しあどけない2人の寝顔。
タカちゃんとそっくりな長い睫毛とツンと立った綺麗な小さなお鼻。
2人の寝息が優しく響く寝室で、2人の寝顔をそっと眺めていれば、時刻はあっという間に夜の22:30を周っていた。
横になりながらマナちゃんのお腹をポンポンと叩いていた所為か、その緩やかなリズムに私も大きな欠伸を一つ。
タカちゃん、今日は遅いなぁ。
何も事件が起きてなければいいんだけど。
そんなことを考えていれば、自然と瞼は重くなっていった。