I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
ある日の放課後の帰り道、家庭科室を通れば、見知った2人の姿を見つけた。
「ちょっと部長!その派手な人、誰ですか?!あなたも手芸部に何の用ですか?!」
「おー安田さん、そんな大声出すなって。ただの見学だよ。この人は3年の西園寺詩織さん。もう時期的に入部とかは難しいけど見学だけでもしたいって言うから、俺が連れてきたんだよ。」
タカちゃんの隣に座る西園寺先輩を見つけると、ツカツカと2人の元へと姿を現した安田さん。
そして、何を思うのか、少し眉根を下げるとタカちゃんのセーターを掴んで、タカちゃんの後ろに隠れるようにして安田さんを伺う西園寺先輩。
「…見学ゥ?」
そんな西園寺先輩に疑うような視線を投げかける安田さん。
「ごめんね、隆くん。やっぱり迷惑だったら私帰るよ?」
「ハハッ、見学くらい何も迷惑じゃねぇって。…な?安田さん、頼むよ。」
「…三ツ谷部長がそう言うなら仕方ないですけど…。でも、邪魔したら許しませんからね!コンクールも近いんだから!」
開け放たれた窓から聴こえてきたそんな3人の会話。
「…ハァー…あんなあからさまにアピールって…。」
部室にまで普通押しかける?
私だって部活中に顔出したことないよ…
ってか、西園寺先輩って彼氏いるんだよね?なのに何故…
…ハァー……
そんなことを考えて、憂鬱な足どりで校門へと歩き出そうとしたとき、「椿木さん!」と後ろから声をかけられた。
声の主なんか振り向かなくたってわかる。
「ん、どうしたの?タカちゃん。」
正直、今はあんまり話したくないんだけどな、なんて。
心の中でそう独り言ちると、いつもの笑顔を張り付けて振り向いた。
きっと聞こえないフリすることだって出来たけど、それでも声をかけられて嬉しいと思ってしまったのは、きっと惚れた弱みというやつで。
「…実は今日この後、急に集会が入ってさ。ルナとマナのこと頼めたりすっかな?」
飯は食わせてから行くからさ、なんて困ったように笑って見せたタカちゃん。
「ん、りょーかい。病院寄ったらすぐ帰るね!」
私がそう言えば、安心したように笑って「いつも悪ぃな、椿木さんいてくれてほんとよかったわ。」なんて零したタカちゃん。
そんなタカちゃんの後ろで面白くなさそうにこちらを見つめていた西園寺先輩と一瞬目があった、気がした。