I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
守ってあげたくなるような先輩の綺麗な涙を前に心を痛めていれば、タカちゃんが先輩の方を振り向いた。
「あんま擦ると綺麗な目ぇ、腫れちまうだろ。これ使いなよ、先輩。」
タカちゃんはそう言うとポケットからハンカチを取り出し、先輩へと差し出した。
「…ご…めん、ありがとう。」
「…ほら、膝の傷もある事だし、とりあえず乗んなよ。」
そして、ハンカチを受け取った先輩にふわりと微笑むと、タカちゃんは再び先輩に背中を向けて後ろに乗るように促す。
先輩は少し考える素振りを見せた後で、申し訳なさそうにタカちゃんの背中におぶさった。
「…悪ぃ、椿木さん。先輩届けたらすぐ戻るけど、HR間に合わなかったら先生に保健室行ってるって言っといてくんない?」
軽々と先輩のことを持ち上げたタカちゃんは、必殺お兄ちゃんスマイルをこちらに向ける。
「…おっけー!ごめんね、ありがと、タカちゃん。」
先輩を背負って後ろを向いて歩き出したタカちゃん。
私は頼もしい後ろ姿を見送った。
けれどもこの時、
何故だか、とても嫌な予感がした。
すごくすごく。
理由はわからないけれども、ひどく胸がザワザワと騒いでいたのを今でも鮮明に覚えている。