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I don’t want to miss a thing.

第1章 …I'll be there for you.



2人の変化はすぐに訪れた。

体育祭明けの月曜日、まだ少し眠い目をこすりながらタカちゃんと登校していれば、ヒソヒソと聞こえてくる女の子達の声。

「あの2人って本当に付き合ってないの?見た?体育祭の。」

とか

「彼女いないなら、私、三ツ谷くんのこと狙っちゃおっかなー。体育祭ほんとかっこよかったよねー。」

とか

「椿木凛子って、いつも三ツ谷くんの周りうろついてる子でしょ?うざいんだけど。何なのアレ。ただのぶりっ子じゃん。」

とか

「2年のくせに何か最近調子乗りすぎだよね。ただの男たらしじゃん。」

とか

ちらほらと方々から聞こえてくる心無い言葉の数々に私は眉を顰めた。

タカちゃんかっこいいとか付き合いたいとか、そんな類の声は、仕方ないとは思うけど…

どうして私達のことを何も知らない人達にそんな風に好き勝手に言われなければならないんだろう。

問題はまず、あなた達誰ですか。
そこからなのです…………。

私がそんなことを考えていれば、

タカちゃんにも陰口のいくつかが聞こえたようで、こちらをチラリと横目で見ると、「…あー、まぁ気にすんなよ。」と困ったように眉を下げた。

そして昇降口、上履きに履き替えようと思って少し上を見上げて目に入ったのは、タカちゃんの下駄箱に入れられたいくつかの小さく織り込まれた手紙のような紙キレ。

「…それ、ラブレター?タカちゃん、体育祭から一層モテモテだね~!」

この間も後輩の女の子に待ち伏せされてたし。なんて。

モヤモヤと霞む心を誤魔化すように、いつもと何ら変わらない声で笑ってみる。

「バカ、あんま茶化すなよ」

困ったようにはにかんだタカちゃんの笑顔がひどく私の心に突き刺さった。

「…そういう椿木さんだって、体育祭以降、すげぇ男に言い寄られてんじゃん。」

手紙をポケットに突っ込むと、そう言って目をふせたまま微笑んだタカちゃん。

「えー?タカちゃんほどじゃないよ。…確かに、男の子に話しかけられたりすることは増えたけど、別にタカちゃんみたいに呼び出されたりしてないしね。」

「…ハハッ、その鈍感さじゃ、椿木さんのこと想ってる奴らも報われねぇな。」

私がそう言えば、タカちゃんは苦笑しながら教室に向けて歩き出した。

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