I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
私が予想外の出来事に驚きと恥ずかしさとでアタフタとしていれば、「…ということでもう一回。」なんて、タカちゃんは少し意地悪な顔で笑った。
「…絶対全部聞いてたじゃん!起きてたじゃん!」
「ん、何も聞いてねぇって。…ほら、何て言ったんだよ今。俺にもちゃんと教えて。」
そう言ってふわりと優しく微笑んだタカちゃんに、結局私のほうが根負けして、
「…騎馬戦の時も、リレーの時もドキドキするくらい、すごいかっこ…よかったです。」
と小さくモゴモゴと口を動かす羽目になる。
そうすれば、タカちゃんは満足そうに笑って、
「……おー、椿木さんに言われっと素直に嬉しいわ。…椿木さんもダンスめっちゃよかったじゃん。……その…キューティーハニーのとことか、俺もちょっと…やばかったかも。」
なんて言っては少し顔を赤らめた。
「…そう?…何か恥ずかしいなぁ。」
そんな普段見せないタカちゃんの少し照れた顔が伝染して、私の顔にも熱がこもる。
うわぁ、嬉しいけど、なにこれ、
何かめっちゃ恥ずかしー…
トクンッ…トクンッ…トクンットクンッ…
小さく音を立てる私の胸。
暫くお互い何も喋らないまま時間だけがただ過ぎていった。
「…………なぁ、椿木さんって好きな奴いんの?」
暫しの沈黙のあと、不意にタカちゃんが口を開く。
” 好きな奴 ” なんて予想外の質問にドクンッと高鳴る鼓動。
タカちゃんが真剣な瞳でそんなこと聞くものだから、私はタカちゃんの瞳から目がそらせない。
「…………何、急に…。」
「………ひょっとして俺だったりする?」
私はタカちゃんのその言葉に、目を大きく瞬かせた。
そんな様子を見たタカちゃんは何がおかしいのかクスクスと笑うと「…なんてな、冗談。」と言って立ち上がった。
私の心臓と思考になんかお構いなしのタカちゃんは、平然とした様子で、
「よっしゃ、そろそろ涼しくなってきたし帰るか。」
なんて言って、ふわりと笑った。
そして、「また急に倒れられても困るし」なんて私の手を引いて歩き出したタカちゃん。
あの時、『そうだよ』と返していたら、どうなっていたのだろう?
自分の気持ちをもっとちゃんと伝えておけばよかったなんて思う日が本当に来るとは、この時はまだ予想だにしていなかった。