I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
……………なんだったんでしょうか、今のは。
「もう少し寝てろよ。俺もここにいっから。」とタカちゃんに言われてから私がどれくらい眠っていたのかはわからない。
タカちゃんがゆっくりと髪を撫でてくれるのが気持ちよくて、私は確かすぐに夢の中へと堕ちていったんだと思う。
いや別にそこは問題だけど、そこまで大きな問題でもなくて。
私が今気にしているのは、眠りから覚めて目を開けようとしていた時に額に触れた柔らかな感覚。
それから、どういうわけか、優しいテノールの声で「…凛子……」と呟いたタカちゃんの言動について。
あれから少し時間が経って、少し休んだからかようやく頭も回転し出して、脳内CPUを全力で回しているのに、やっぱり答えは見つからない。
タカちゃんが今まで一度でも、私のことを名前で呼んだことなんてあったでしょうか?
正解は…NO。今まで一度も私の名前を呼んだことはありません。
それに記憶に残る額に触れたあの感触は、きっとタカちゃんの唇なわけで。
一体全体、どうしたらそのような言動に至るのでしょうか……。
目を開けるべきか開けないべきか暫く悩んだのち、恐る恐る目を開けてみれば、私のすぐ傍でベッドに顔を突っ伏して眠っているタカちゃんの姿があった。
身体を横向きにして、タカちゃんの寝顔をまじまじと見つめる。
長い睫毛。少し反り込みの入った眉毛。
「…ほんとキレーな顔してる。」
あどけない寝顔に私はクスリと笑みを零して、タカちゃんの少し紫交じりの銀髪に手を伸ばした。
「…タカちゃん、いつもありがとね。……あと、騎馬戦もリレーも、すーんごーいかっこよかったよタカちゃん。…ドキドキしちゃった。」
そう言って、いつもタカちゃんが撫でてくれるようにタカちゃんの髪の毛を優しく撫でる。
ツンツンしてるのに、髪質が柔らかいのか、撫で心地のよい感触に私はまた微笑む。
でも、今日は本当にタカちゃん大活躍だったなぁ。
きっと優美ちゃんの言う通り、増々タカちゃんはモテモテになるんだろうなぁ。なんて。
複雑な想いを一人胸に秘めていれば、長い睫毛の隙間から綺麗な瞳が私の瞳を捕らえた。
「…………バーカ、そういうのは俺が起きてる時に言えよな。」
「え?!タ、タカちゃん?!」