I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
昼下がりを過ぎても、私達を煌々と照らし続ける太陽。
優美ちゃんと応援席の一番前の方に繰り出せば、立っているだけで汗が滝のように噴き出してくるのを感じた。
クラス対抗リレー、
タカちゃんは、なんとうちのクラスのアンカー。
世間からは不良なんて言われてるけど、タカちゃんってやっぱ全然不良っぽくないんだよなぁ、なんて。
私は、きちんと整列しながら出番を待つタカちゃんの横顔を見て笑みを一つ零した。
ランナー達がそれぞれ定位置につけば、審判の係をしてる子がピストルを空高く上げる。
「…いちについてー…よーい…」
レース前独特の緊張感が会場を包んだ後、パァンッ、と大きな破裂音が響いた。
小さな銃口からゆらりと白煙が零れると同時に、スタート地点に立った選手達が蹴り飛ばした砂ぼこりがグラウンドに舞う。
「水原、かませー!!!」
「「きゃー!佐藤くん頑張ってー!!!」」
レースの行く末を見ようとする人でごった返す観客席に、あちこちから聞こえてくる大音量の声援。
バトンが繋がれていけばいくほど、白熱した戦いに会場の熱気は過熱していくようだった。
「…うわぁ…いけ…あぁ抜かされた!…おーい清野本気出せオラー!!!」
隣を見ても、ハラハラとした表情でトラックを走る私たちのクラスのランナー達を叱咤激励する優美ちゃんの姿。
私はチカチカと暗転し出した視界に少し冷や汗を垂らしながら、トラックに目線を戻した。
みんな頑張ってくれているけど、現在うちのクラスは4クラス中3位。
レースも最終局面、スタート地点で前走者に手をふっているタカちゃんがどうにかして形勢逆転することを、きっとクラス内だけでなく白組の全員が祈っていたと思う。
そんな期待を知ってかしらずか安心しろと言わんばかりにニッと笑って見せたタカちゃん。
タカちゃんのこういうお兄ちゃんっぽい笑い方、なんてゆーかすごくすき。
なんて、私は身体の危険信号を半ば無視しながら、タカちゃんの姿を静かに見守っていた。
こうして、バトンが清野くんからタカちゃんの後ろ手に渡されれば、タカちゃんは風を切るように走り出した。
『…東卍の中じゃ、俺、足早い方じゃねぇんだけどな。』
以前、タカちゃんが、リレー走者に選出された時に見せた少し照れたような笑顔が脳裏に浮かぶ。