I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「……?」
こちらに満面の笑みを向けた椿木さん、
…ではあったものの、その見慣れたはずの笑顔に俺はほんの少しの違和感を感じた。
どこか無理して笑っているような少しだけひきつった笑顔と、サッと血の気が引いたような青白い顔。
ひょっとして熱中症にでもなったのか?なんて、俺は線の細いその後ろ姿を瞳で追った。
「あ?どうかしたかー三ツ谷?」
そして、そんな俺の様子に気が付いたドラケン。
不思議そうにそう俺に尋ねるドラケンの声を聞けば、マイキー、パー、ぺーもこちらを振り向く。
「…いや、椿木さん、顔色悪くねぇ?」
俺がそう言えば、んー?と首を傾げる東卍メンバー。
「そう?俺、楽しそうに笑ってるようにしか見えなかったけど…。」
「「「俺も。」」」
「……マジで?」
きょとんとこちらを見つめてくるマイキー達に、俺も首を傾げる。
ひょっとして俺の考えすぎか?なんて。
「でも、いつも一緒にいる三ツ谷がそう感じたってことはそうなんだろ。……心配なら、早く凛子ちゃんのとこ、行って来いよ。」
「……そうだな……ちょっと俺行ってくるわ。」
俺は、ドラケンの言葉に背中を押され、椿木さんのところへ急ぎ足で向かった。
「椿木さん。」
退場門の方から応援席へと戻ろうとしていた椿木さんの後ろ姿に声をかければ、「タカちゃん?」と不思議そうな顔をした椿木さんがこちらを振り向いた。
途中、何人かの女子生徒に声をかけられた気がしたが、そんなことは今はどうだっていい。
「…何か具合悪そうだけど、大丈夫か?やっぱ顔色も悪ぃな。」
近くで見ると一層際立つ顔色の悪さに俺は眉を顰める。
「あー、ちょっと暑くてフラフラしちゃっただけだから大丈夫大丈夫。」
にへらとこちらに笑みを向けた椿木さん。
「バーカ。椿木さんの大丈夫は基本的に大丈夫じゃねぇだろうが。今、ポカリか何か買ってくっから、その辺の日当たんねぇとこでちょっと待ってろよ。」
俺はそう言うと、学校を直ぐ出たところの自販機へと足を向けた。