I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「おー、さっきから選曲センスめちゃくちゃいいじゃねぇか。誰だよ、これ考えたの。」
俺が自分の出番でもないのに楽しそうな可愛い椿木さんの姿に頬を緩めていれば、感心するように口を開いたドラケン。
そして、ドラケンの言葉に、『これ考えたの、椿木さん!』なんて自分を褒められたかのように上機嫌な俺。
暫くしてココロオドルの二番サビが終わった辺りで、椿木さんと森田さんを三角の頂点にしたようなフォーメーションで同学年の女子達が勢いよく立ち上がった。
手拍子の音と、軽快なテンポがグラウンド中に響く。
” Oah its so fine its so fine
my Waikiki Mickey Hey hey!
Hey Mickey hey hey ! ”
「おー!!!凛子ちゃんと朝礼台の子、センターじゃん!!!」
ゴリエのMickeyのMVをそっくり忠実に再現したようなチアダンス要素を散りばめたダンス。
椿木さん含め、それぞれが眩しい笑顔をこれでもかというほど振りまきながら楽しそうに踊っていた。
どうやら、ゴリエが森田さん筆頭にした片側の女子で、ジョアンが椿木さん筆頭にした反対側の女子というような割り振りになっているらしい。
少し笑える要素も盛り込んだ観客寄せの楽しい振り付けになっていた。
「ハハッ、椿木さん達、まじでよく考えたなぁ。」
俺はそんな愉快な椿木さん達のダンスをクツクツと喉を鳴らしながら眺める。
と同時に、夏休みに入る少し前の夕食後、ウチで土下座しながら、ダンスの衣装を作ってほしいと懇願してきた椿木さんのことを思い出していた。
『…タカちゃん…実はお願いがあります!!!ダンスの衣装、上はTシャツとかで何とかするのでスカートだけ手芸部で作ってくれませんか?!…ジャージだとちょっと味気なくて…』
『ハハッ、そんな土下座なんてしなくても作ってやるけど。…あー、でもそうだな、ダンスの振り付けって結構動き激しめ?』
『…うーん、どうだろ。チアっぽい感じで足とか大きく振り上げたりはするかな。』
あの時、それを聞いてスカートではなく、キュロットに仕立てた俺を褒めてやりたい。
俺は1人ダンスを眺めながらそう思った。