I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「ちょっと冷蔵庫の中見せて。俺スープかなんか作るよ。」
「え、いいよいいよ!送ってもらったばっかなのに悪いじゃん。」
そんなことを言って遠慮する椿木さんを横目に、冷蔵庫を半ば勝手に開ければ、野菜の下茹でや副菜がタッパーに幾つか保存されていることに気が付き、一人感心する。
「え、作り置きしてんの?勉強中とか言いつつすげーな。」
ハンバーグをレンジにいれた椿木さんが、恥ずかしそうに、隣に来る。
「んー、まだそんなにレパートリーないんだけどね。」
へへっと照れたように笑う椿木さんを見て、いい奥さんになりそうだなと微笑んだ。
「ちょっとコレ使っていい?」
冷蔵庫の中にあった適当な野菜とベーコンを手にとれば、椿木さんは「うん」と言って笑った。
水を入れた小鍋を火にかけ、借りた食材を適当に刻んでいれる。その間に、もう一品作れそうなので、簡単な野菜炒めでもと思いフライパンに油を落とした。
「…三ツ谷くん、手際いいー!」
2人で他愛もない話をしながら調理をしていれば、横で見ていた椿木さんが、口を開く。
「へへ、なんか照れんな。」
料理をしている様子をジーっと見つめてうんうんと首を縦にふる椿木さんを横目で見て、頭をポリポリと掻いた。
「私なんかまだ料理本とにらめっこしながら一品ずつしか作れなくて凄い時間かかるの。なるほど、そうやって並行して作ってけば色々一気に作れるんだねー!」
三ツ谷君ってなんでも出来るんだなー、ほんとすごいなー!なんて、普段通り料理しているだけなのに、横から凄い誉め言葉が降ってくるので、ひどくこそばゆい気持ちになる。
でも、少し椿木さんが八戒と重なって、笑みが零れた。
「椿木さんって、少し俺の後輩に似てるかも。」
そう言って笑えば、「後輩?」と椿木さんが不思議そうに首を傾げた。
「柴八戒っていうんだけど、一つ下の奴でさ、なんか知らねーけどすげぇ俺に懐いてくれてて、タカちゃんタカちゃんってうるせぇのなんの。」
日頃の八戒とのエピソードについて話せば、椿木さんは終始ニコニコしながら話を聞いていた。
「八戒くんは三ツ谷くんのこと大好きなんだねぇ。」
「ハハッ、でけー弟がいる気分だよ。」