I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
華奢なように見えて自分より一回り大きな背中
優しく自分を抱き寄せた力強くて優しい腕
抱きとめられた時に感じた、たくましい胸の厚み
それら全ての感触を、温もりを、私は知っている
身体が覚えているタカちゃんの感覚を思い出せば、私の胸は激しく脈打った。
…タカちゃんのことが、どうしようもなく、すき。
心の中でぽつりとタカちゃんへの想いが零れ落ちると同時に、タカちゃんが赤いハチマキ片手に大きく腕を振り上げた。
「…ッシャア!」
一瞬の隙をついた俊敏な行動
タカちゃんが、ぺーくんの背後からハチマキを奪い取り、勝敗は白組の勝ちという結果に収まる。
「「「キャー!!!三ツ谷先輩かっこいいー!」」」
両腕を高く掲げ、応援席の方に満面の笑みでニカッと笑いかけたタカちゃんの姿に、応援席からは歓声が湧き上がった。
手芸部の子かな?
どこからともなく聞こえた黄色い歓声に、私の胸はズキンと小さな音を立てる。
「あーあ…こりゃまたモテるわ、三ツ谷くん。年頃の女は大好物なのよ、ちょい悪男子。」
そんな私の心を知ってか知らずか、隣でそう言ってため息をつく優美ちゃん。
「…ハハハッ、優美ちゃん、一体今いくつ?」
「ん?身体は14、心は27」
胸の小さな痛みを誤魔化すように優美ちゃんの冗談に笑みを零せば、まだ校庭の真ん中で歓声を浴びてるタカちゃんと目があった。
何を想うのかこちらをジッと見つめる瞳。
再びドクンッと高鳴る私の鼓動。
苦し紛れに、グッと親指を立て笑顔を向けてみれば、タカちゃんも嬉しそうにニッと笑って親指をこちらに向けた。
「……あんた達、本当に付き合ってないんだよね?周りに隠してるとかでなく。」
そんな私達の様子を半ば呆れたように見ていた優美ちゃんが、そう怪訝そうにこちらを覗いてくるので、私は苦笑する。
「…残念ながら。」
「…変なの。でも、早く手中に納めとかないと、どっかの女豹に先越されちゃうかもよ?いいのか~?」
「…んー…距離が近い分、中々勇気…出なくて…。」
「…なるほどねぇ…まぁその2人のもどかしい感じが私は大好物なわけだけど。…はーあ…いいなぁ私も恋したーい!」
そう言って大きな溜息をつくと、ダンスで使うポンポン片手に入場門の方へと歩き出す優美ちゃん。
私も複雑な想いを抱えながら、優美ちゃんの後に続いた。