I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
「……えーーーー…まじか…最悪……。」
トイレの個室内で、凛子の声が響く。
「…凛子~?お腹痛いの大丈夫?」
「……優美ちゃん、ごめん、お願いがあるんだけど。」
暫く個室から出てこない凛子を心配した友人の森田優美に、凛子がいつもより早く生理になってしまったためバッグの中からポーチを取ってきてほしいといった旨を伝えれば、優美は2つ返事で教室へと向かった。
一方、個室で大きな溜息をついた凛子。
「…ギリギリ今日は大丈夫だと思ったんだけどなぁ。体育祭に生理は辛すぎるよぉ……。」
ポーチに予備の薬残ってたかな、なんて凛子がズキズキと痛みだした下腹部を撫でていれば、「凛子ー!ポーチ上から投げるよー!」と早くも教室から戻ってきた優美の声が響いた。
「ありがと、お願い~。」
凛子がそう言えば、頭上から降ってきたポーチ。
上手い事キャッチして、中に予備の下着とナプキン、それから痛み止めが2錠入っていることを確認すると、凛子は一先ず、ほっと胸を撫でおろす。
汚れてしまった下着を交換してトイレから出れば、優美が髪の毛を2つ結びに結びながら心配そうにこちらを振り向く。
「凛子、確か生理重かったよね?…午後のダンスまで、なんとか頑張れそ?」
心配そうに顔を覗き込んでくる優美に凛子が、「うん!だいじょーぶ!薬のむし!」とニコッと笑いかければ、優美は安心したようにふにゃりと笑う。
「よかった。…凛子、三ツ谷くんに可愛い姿見せるために今日まで頑張ってきたもんね!」
そして、ニヤニヤと楽しそうな笑顔を浮かべて、凛子の肩を叩けば、凛子は「え?!」と肩を大きく跳ね上げた。
「いやいやいや…確かに優美ちゃんにお願いされて一緒にダンス委員引き受けてから結構頑張ってきたけど、断じてそういうわけじゃなくって…」
「ははっ、凛子、そんな真っ赤な顔して言っても説得力ないって!…いやー、凛子の踊ってる姿なんか見たら、三ツ谷くん鼻の下伸ばしちゃうぞ~、むふふ♡」
「…何で優美ちゃんがそんなに楽しそうなの。」
凛子が苦笑しながらそう言えば、優美は「女の子ですもの。恋バナが大好物なのであります♡」と言って笑った。