第2章 始まり
ーみるくー
赤井さんのもとから立ち去ったあと、スコッチのことを報告するため私はジンの所へ向かっていた。薄暗い廊下を真っ直ぐ歩き続ける。
ふと、遠くから耳を済まさないと聞こえないほどの足音が聞こえてきた。
ジンだ。
ジン「おい、仕事は片付いたか?」
「私がすることなかったよ?ライが銃でバーンって、それを見守るだけ。」
ジン「まぁ、ライは少し怪しいとこがあったからな。」
「そう?脈を確認してきたから大丈夫。スコッチはちゃんと死んでるよ。」
ジン「ならいい。お疲れ様。」
ジンの大きい手が私の頭をわしわしと撫でる。
人の頭を撫でなれてない手だ。
「私、しばらく休みだったよね?」
そう聞くとジンは私から手を離し頷く。
「じゃあ私帰るね。家の人に怪しまれそうだし。」
ジンがまた頷いたのを確認して私はその場から去ろうとすると後ろから声がかかった。
ジン「カルーア!死ぬなよ。」
「気をつけるよ。」
カルーア。カルーアミルクというカクテルからとられた私のコードネームだ。
家に帰るといつもの通りに暴力が待っている。小さい頃からのことなので、もう慣れてきた。
何も考えず、ただ笑ってやり過ごす。
家の人は少し満足すると私を庭に放り出した。それもまた、いつもの事。
いつまでも庭にいたってしかたがないから私は夜の散歩に出る。どうせ、家には入れない。
少しひんやりとした空気が漂う。
見上げると大きな月が浮かんでいた。
あぁ、なんて綺麗なんだろう。
夜の散歩では必ず公園に立ち寄ることにしている。私の中の子ども心がそうさせているのかもしれない。
公園のベンチに腰かけようと近づくと、先客がいた。
男性はすすり泣いているようだった。
「…どうされました?」
?「いえ、何もありません。」
彼が顔をあげる。
バーボンだったのか。
「そんな顔で言われても説得力皆無ですよ、降谷さん。」
零「どうして名前を…?」
「警戒しないでください。私、天使なんですよ。今日来た人に零(ゼロ)をよろしくってあなたの事を頼まれたんです。」
そう言うと彼は笑った。