火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第9章 新しい出会い
藤襲山に着く頃には
夜も大分深まっていた。
山の麓は、溢れんばかりの藤の花で
咲き乱れていた。
頂に繋がる階段を登っていくにつれ、
馨しい香りはどんどん濃くなっていく。
頂に到着すると、
そこには二十人程の人たちがいた。
ふみのよりも
小さい少年少女たちも数人見受けられた。
皆の表情はどれも険しく、
ただならぬ雰囲気だった。
ふと、その中で見つけた、
直毛の黒髪が美しい少女がいた。
束ねられた髪は長く、腰まであり、
前髪は真っ直ぐに切り揃えられていた。
きりっとした顔持ちは、大人っぽく見えた。
ふみのと同じくらいか
少し年上といった感じもする。
(あんな綺麗な子もいるんだ…)
じっとその子に見惚れていると、
前方から、華麗な着物を身に纏った
容姿がそっくりな少女二人が歩いてきた。
「皆さま。今宵は最終戦別にお集まりくださって
ありがとうございます。
藤襲山には鬼殺の剣士様方が生け捕りにした
鬼が閉じ込めており、外に出ることはできません」
「山の麓から中腹にかけて
鬼共の嫌う藤の花が一年中
狂い咲いているからでございます」
「しかしこの先からは藤の花が
咲いておりませんから、鬼共がおります。
この中で七日間生き抜く」
「それが最終選別の合格条件でございます。
では、行ってらっしゃいませ」
説明が終わった途端、
その場にいた者達がザッと勢い良く
一斉に暗い闇に消えていった。
ふみのは大きく深呼吸をして、
その後に続いた。
森の中は湿っぽく、
風で揺れる葉の音が薄気味悪く感じる。
辺りは不気味なほど静まり返り、
緊張で心臓が激しく鳴る。
杏寿郎に譲ってもらった刀を
ぎゅっと握る。
(大丈夫、大丈夫…っ)
ふみのは何度も自分に言い聞かせた。
少し走って先に進んでいくと
嫌な臭いが鼻を付いた。
(何、この…臭いは…っ?!
鼻が捥げそう…っ)
何かが腐敗したような異臭が充満し
それは次第に強くなっていく。
すると突然、目の前に
全身の皮膚が爛れた
痩せ細った鬼が出てきた。
「よく来たなあ?小娘…!
今日は一段と腹が空いてるんだあ…!
その体、引き千切って喰ってやる…!」
悍ましい鬼の形相に
ふみのは後ろへ、じりっとたじろぐ。