火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第9章 新しい出会い
杏寿郎の髪が
ふみのの頬を掠めて擽る。
ねえ、杏寿郎…?
今、どんな顔をしているの?
どんな思いで、言ってくれているの?
もうこんなに抱きしめてくれて
私は十分すぎるくらい、嬉しい
絶対に、戻ってくるから、大丈夫
私は絶対に、貴方をひとりにしない
「杏寿郎?」
ふみのは杏寿郎の顔を見ようと
杏寿郎の頬に手を当て、ゆっくりと自分の方に向けさせる。
「大丈夫!私は絶対に戻ってくるわ!
だから、信じて待っていて欲しい」
ふみのは、杏寿郎に笑いかける。
杏寿郎はふみのの笑顔を見て、
心配ばかりしている自分に、
申し訳無さが込み上げた。
ふみのの笑顔に、
杏寿郎の心にぽっと希望が灯るようだった。
「そうだな…ふみのなら、やり遂げられる!
七日目の朝、此処でふみのの帰りを待っている!!」
「うん…!ありがとう!
行ってきますっ!」
ふみのは二人が見えなくなるまで
大きく手を振った。
見えなくなっても、手を振った。
それは、今までの自分にも
手を振っているようだった。
まだ恐怖や危難を知らない、
守られていただけの自分に。
私は、変わる
私は、変わった
たくさんの人たちに支えられて
今の私がある
もう、今までの
守られるだけの自分じゃない
かけがえのない私の思い出を胸に
守りたい人たちの為に
私はこの一歩を踏み出していく
必ず、生きて、戻る
ふみのは藤襲山へと、歩みを進めた。