火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第9章 新しい出会い
(もうこの鬼は人の面影もない…!)
その声色は呻き声を潰したようで、
焼け爛れたような皮膚からは異臭が止め処なく漂う。
「すぐ、楽にしてやらアっ!!!」
ザッとその場から高く飛び、
ふみのの目の前に襲いかかってきた。
(来る…っ!!)
ふみのは構えて鞘から刀を抜く。
「全集中 光の呼吸 壱ノ型 翠光!!」
鬼の頚を目掛けて、
ふみのは刀を勢い良く振るい落とした。
「グワッ…!!」
ドサッとふみのの背後で、
鬼の頸と胴体部分が倒れた。
「…き、斬れた…っ!」
目の前でじゅわりと音を立てながら
鬼は灰のようにぱさぱさと消えていく。
「アぁあア、熱イ、熱いィィッ…!!」
「…っ!」
鬼は跡形もなく消え失せた。
この皮膚の爛れは火傷だったのかと
ふみのは思った。
もう命が助からないところで、
鬼にされてしまったのだろうか。
ふみのは虚しくなる気持ちを抱えたまま、
その先へと進んでいった。
あんなに集まっていた人達が
全く見当たらないことにふみのは気付く。
(あんなにたくさん、いたのに…!)
余程この森は広いのかと思い巡らしたが、
ふみのは皆の無事だけを只管に祈った。
「きゃあああああああ!!!」
少し先から悲鳴が聞こえた。
(何…っ?!)
ふみのは駆け足で、
声のした方へと向かっていく。
(嫌な気配…さっきよりも重い…っ)
段々と乗し掛かるような重圧に体が鈍る。
威圧に反発するように足を早め
木々を避けていくと、
開けた場所に、大量の鮮血が広がっていた。
(…っ!!!)
ふみのは、何かの気配を感じ前に目をやると
そこには額から角が生えたまだ幼さが残る
少年のような鬼がいた。
その鬼の手には、人の首がぐらりとぶら下がる。
他にも何人かの遺体が
鬼の前に倒れていた。
(なんて、酷いことを…っ!!)
ぎりっと鬼を見ると
その鬼は口を開いた。
「…誰だ、俺の妹を殺したのは」
(!?)
その鬼の眼光は恐ろしく
この世の全てを敵視しているかのように
鋭く睨めつけてくる。
(妹…!?)
「…お前、あの時の匂いがする」
(え…あの時…!?)
鬼の言っている意味が分からず
ふみのは動揺した。