火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第9章 新しい出会い
最終選別まで、
あっという間に時間が進んでいった。
ふみのは緊張で眠れない日もあったが、
そんな夜は瞑想をして気持ちを落ち着けた。
動揺するときこそ、
ゆっくり呼吸を繰り返す。
自分の意識を、
此処でない別の場所へと、意識を置いてみる。
すると心の中にある濁った気持ちが
少しずつ浄化されいくようだった。
その日の夜も、
ふみのは縁側で瞑想をしていた。
(だめだ…、今日は全然落ち着かない…)
ふみのは七日後に迫っている
最終選別のことを思うと、
どうしても緊張してしまう。
はあ、とふみのはため息をつく。
満月が綺麗に見える夜だった。
(静かだな…月の光が心地いい…)
瞑想や全集中の呼吸を鍛えているからか、
目を閉じたままでも
風の靡く音や、僅かな月の光量も肌で
感じるようになってきた。
その時、杏寿郎の気配を感じた。
「…杏寿郎?」
ふみのは、はっと後ろを向く。
すると、とんとんと襖が鳴った。
「ふみの!今いいだろうか!」
「! あ!うん!大丈夫よ!」
襖が開くと、杏寿郎が部屋に入ってきた。
「…どうした?!驚いた顔をして!」
「あ!杏寿郎が来る前に
なんだか杏寿郎の気配がしたような、気がしたの」
「そうか!それはすごいな!」
そう言いながら、
杏寿郎はふみのの隣に腰を下ろした。
「たまたま、偶然かもしれないけど!」
はははと杏寿郎は笑った。
杏寿郎の焔色の髪が、月明かりに揺れた。
「これをふみのに渡したくてな」
杏寿郎の手から差し出されたのは、
小紫色の絹で作られた御守り袋だった。