火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第8章 呪われた呼吸
槇寿郎から光の呼吸の過去のことを知ったが、
ふみのはあまり深く考えないようにした。
例え、それが本当の話だとしても
自分自身を、
光の呼吸を、信じたかった。
光の呼吸は、恐ろしいものではない、
きっと隠された何かがあるはずだと
ふみの何処となく感じていた。
ただ、今、自分ができることは
この呼吸を使って、鬼の頚を斬っていくこと。
ふみのは、
もう何も恐怖を感じていなかった。
自分の命よりも、大切なものがある。
それを失うこと以上の怖さなど、あるはずがない。
ただ、ひらすら、
刃をふ振るっていくのみ。
ふみのはその日から
これまで以上に死に物狂いで鍛錬に取り組んだ。
木刀が打ちつけ合う激しい音が
今日も庭に響き渡る。
「ふみの!ふみの!!
もう止めるんだ!!木刀を降ろせ!!」
杏寿郎はふみのに
木刀を降ろさせようと必死に言い聞かせるが、
ふみのは止めようとしない。
「止めない!!絶対!!絶対に止めない!!」
いつもと明らかに様子が違うふみのに
杏寿郎は驚き、困惑していた。
(どうしたんだ…っ、今日のふみのは…っ!)
ふみのの目は、
狂気に満ちているようにも見え、
本気で杏寿郎に襲いかかってきていた。
(…一度本気で止めにかかるしか、ない)
杏寿郎は覚悟の上で、型を出した。
「炎の呼吸 壱ノ型 不知火!!」
杏寿郎の木刀から
真剣ほどではないが
炎がふみのへと放たれた。
ふみのは咄嗟に身を翻し、炎を避けた。
二人の間に距離ができる。
「…すまないが、型を使わせてもらった」
「ううん。私も引き下がれなかった。
でも、そうじゃないと、
杏寿郎に勝たないと、
いつまでも私は鬼殺隊へは進めない…!」
「…そうか、そうだな。
…なら、俺も本気でいく。
いいのか、ふみの」
「うん。私は私自身と誠心誠意、戦う」
「なら、俺は真剣でいく。
ふみのはそのまま木刀で
俺の刀を折れ」
「……分かったわ…」