火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第8章 呪われた呼吸
ふみのの目から、大粒の涙が溢れ落ちた。
槇寿郎は閉じていた口を開き、
きつい目つきでふみのを見つめる。
「……俺は、ふみのさんが思うほど、
強い人間じゃない…っ!!
俺は…瑠火を、妻を、最愛の妻でさえ、
守れない人間なんだ!!!!!」
槇寿郎の言葉に、
ふみのは息を飲んだ。
「………もう、出ていってくれ」
槇寿郎は最後の言葉を吐き出すと、
また庭の方を向いた。
「…槇寿郎様、私は鬼殺隊を目指します。
たとえ光の呼吸が呪われていたとしても、
私は自分の使命を、果たしたいと思います。
そして、杏寿郎は
…私が、必ず、守り抜きます。
…本のことは…本当に、申し訳ありませんでした…」
槇寿郎は何も言わず
そのまま外を見続けていた。
ふみのは持ってきた本を
そっと布団の側に置いた。
その場から立ち上がり、
部屋から出かけたところで、
足を止めた。
ふみのは振り返って、
槇寿郎に言った。
「槇寿郎様、…どうかお身体だけは、
くれぐれも大事になさってください」
そう言い残して、
ふみのは深々と頭を下げ、部屋を後にした。