火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第8章 呪われた呼吸
翌朝、ふみのと千寿郎は朝食を終え、
片付けをしていた。
杏寿郎は明け方に急遽、鎹鴉の要に呼ばれた。
街で鬼が出たとのことで
見廻りへと向かって行った。
「千寿郎くん、片付けた後、
槇寿郎様のところに行ってきてもいいかしら」
「はい!大丈夫です!
…父上は最近、またお酒を…
頻繁に買いに行っているみたいで…」
「そうね…。
私からも控えていただくように、お伝えしてみるね」
最近一人で出かけているのを
ふみのも頻繁に見かけていた。
何度か、杏寿郎が引き止めようと
声をかけていたが、
それをも振り切り、耳を貸さなかった。
ふみのは千寿郎と台所を片付けた後、
光の呼吸の本を持ち、一人槇寿郎の元へ向かった。
槇寿郎の部屋には、あの日以来、来ていなかった。
部屋の前で、大きく深呼吸をする。
(きっとご気分を悪くされるだろうな…)
緊張しながら、襖を叩く。
「し、槇寿郎様、ふみのです。
今、少し、よろしいでしょうか」
布団が擦れる音がした。
「………何の用だ」
襖越しに槇寿郎の低い声が聞こえた。
「あ、あの、お話ししたいことが、ございます。
開けても、よろしいでしょうか」
「…………本のことだろう」
「え…?」
すると突然、襖が開いた。
ふみのは驚き、
一歩後ろに下がってしまった。
槇寿郎は少しばかり
やつれているようだった。
「…光の呼吸の本を、
持ち出したのだろう?」
槇寿郎は見下ろすように
ふみのを見る。
(えっ、もしかして、
ご存知だったの……っ?!)
ふみのは自分のしたことを激しく後悔し、
罪悪感で胸が締め付けられた。
「ご、ごめんなさい!!!」
ふみのは深く頭を下げた。
どれぐらいそうしていただろう。
「………中へ」
ふみのは頭を上げると、
槇寿郎は布団へ戻り、庭の方を見ながら
あぐらをかいていた。
「し、失礼します…」
ふみのは襖を閉めて、
槇寿郎の布団の横に正座をした。