火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第7章 最終選別に向けて
ああ
私は
杏寿郎のことが
好きなんだ─────
杏寿郎から向けられる紅く燃える瞳に、
ふみのは魅き込まれていく。
いつも私の心を
優しく照らしてくれて
どんな時も笑顔を向けてくれる杏寿郎に
こんなにも、惹かれていた
何度、杏寿郎の笑顔と言葉に救われていたか
正義感に溢れ、彼の熱い心に
私はもう、随分と前から
心を奪われていたのかもしれない
そしてふみのは、思う。
自分も、杏寿郎を守りたいと。
守れるように、なりたいと。
いつも支えてくれるように、
自分も杏寿郎の力になりたい。
杏寿郎を、支えていきたい。
できることなら、
ずっと、
側にいたい、と。
ふみのと杏寿郎は、
しずかに、見つめ合っていた。
「私は……。
…私は、杏寿郎のこと、」
トントン
襖を叩く音が響く。
「兄上、ふみのお姉様、
今、よろしいですか?」
千寿郎だった。
「…ああ、大丈夫だ」
静かに襖が開くと、
千寿郎は心配そうに、二人を交互に見た。
「夕食も取らずに、稽古をされていたので、
心配で来てしまいました…」
「千寿郎、折角夕食の用意をしてくれていたのに、
すまなかった。
少々ふみのに無理をさせてしまってな。
休んでいたところだった」
「千寿郎くん、本当ごめんなさい。
すぐに行けなくて…。
もう落ち着いたから、
この後お夕食いただいてもいいかしら」
「はい!もちろんです!
居間に用意してきます!」
失礼しましたと、安心した表情で
千寿郎は部屋から出ていった。
しんと、部屋の中は二人だけの空気に戻る。
ふみのは口を開いたが、
さっきの言いかけたことは、言えなかった。