火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第7章 最終選別に向けて
「…いや、謝らなければいけないのは俺の方だ。
ふみのの思いを無視して、感情的になってしまった」
「ううん。杏寿郎は私を思って、
言ってくれてたんでしょう…?
それなのに、私は杏寿郎の気持ちも知らないで…。
自分のことしか考えていなかった」
「…怖かったんだ」
「…?」
「…ふみのに、
何かあったら、どうしようかと考えていたら、
怖くなってしまった」
「……杏寿郎…」
「ふみのがどんな思いで
俺に伝えていてくれていたのかも知らずに。
本当に…すまなかった」
「杏寿郎、もう、謝らないで。
あの日の夜、私は本当に、嬉しかったの。
杏寿郎が戻ってきてくれたことが。
…そして、改めて強く思った。
私も、“杏寿郎のような強い隊士になりたい”と。
杏寿郎は、私の、憧れなの」
「……!!」
杏寿郎は、ふみのからの
思いも寄らない言葉に胸を打たれた。
ふみのの瞳は、
揺らぐことなく、杏寿郎を見つめる。
「まだまだ、こんな私だけど、
私は、杏寿郎みたいに、強くなりたいの。
私の大切な人たちを、守れるように」
こんなにも、
熱意に満ちたふみのを見たのは初めてだった。
杏寿郎は、
ふみのからの言葉に口をつぐむ。
ふみのが、
自分に“憧れている”とは。
「でも、本当に、私はまだまだね!
明日からも頑張らなくちゃ!」
笑いながら意気込むふみのに
杏寿郎は、ふみのの真の強さを感じた。
ただ、力があることが、強いことではない。
自分の弱さを真摯に受け止め、
そこから目を逸らさず、
己を信じ、前を向き、一歩ずつ進む勇気。
決して諦めず、
何度でも立ち上がり続ける、“本当の強さ”。
ふみのは、今も、そうやって
自分を掻き立てているのだ。
「…ふみの」
「ん?」
「ふみのは、俺が守る」
「え…?」
「この先、何があろうと、
俺がふみのを守る」
「……っ!」
杏寿郎の熱い眼差しに、
ふみのの胸が、強く、大きく、鳴る。
この眼差しは、初めてではないのに。
今まで、何度も、見ていたはずなのに。
ようやく、ふみのはその感情に気付く。