火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第7章 最終選別に向けて
杏寿郎はふみのの部屋に着くと
自分の腕の中で、すうすうと
ふみのが寝息を立てているのに気が付いた。
ふみののために、
湯浴みの用意を千寿郎に頼んでおいたが、
起こしてはかわいそうだと思い、
そうっと布団へ寝かせた。
布団の横に座り、
寝ているふみのを見つめる。
あれからまた一段と、女性らしく、
綺麗になるふみのに
杏寿郎は目を奪われていた。
「…無理をさせて、すまなかった…」
杏寿郎は、
落とすように、静かに呟く。
ぴくっとふみのの瞼が動いた。
「…ん……」
ふみのの瞼がゆっくりと開いた。
「ふみの、大丈夫か?
どこか痛むところはないか?」
「……あれ、私……、あのあと…」
「俺がここまで運んだ。
気持ちよさそうに眠っていたから、
起こさずにいた」
「ご、ごめんね!ここまで運んでくれて…!
重たくなかった…?」
「ははは!要らぬ心配だ!」
杏寿郎にここまで抱き抱えてもらったと思うと
ふみのは顔を薄ら赤らめた。
最後に放った技のせいなのか、
ふみのの体は、悲鳴を上げていた。
「…っつ…っ!」
起き上がろうとするが、
体の節々が痛い。
「無理をするな。
今日はもうこのまま休んだ方がいい。
でも一応、湯浴みの準備もしてある」
「うん…ありがとう。
もう少し休んだら、あたたまろうかな」
「うむ!」
ふみのは寝たままの姿勢で、
杏寿郎を見る。
「…杏寿郎?」
「ん?」
「その、あの時は…ごめんなさい」
「? 何のことだ??」
「その…私が鬼殺隊に
入りたいって言った、夜のこと…」
あの日から随分と
時間が経ってしまっていた。
ふみのの稽古や杏寿郎の任務に追われて、
なかなか切り出せずにいたのだ。