火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第7章 最終選別に向けて
目の前に蘇る、
あの日の夜。
優しく笑いかけてくれた
健蔵とみちの笑顔。
自分の後を追いかけてきてくれた
よしのと健一郎の姿。
家族で過ごした、幸せな時間。
もう、あの時間は、戻ってこない
でも、今でも、ここにいる
私の家族は、この胸に
私の中で生きている
たくさんの思い出に
私は生かされている
そして、これからの未来のために
今、自分ができることを
心に誓った使命を
全うするために
私は生きている
昨日の自分より、強くなれるように
ほんの少しずつでも、強くなれるように
大切な人たちを、守り抜く為に────
「はああっっっ!!!」
ふみのは全身の力を木刀に込め、
杏寿郎に迫った。
「…っっ!!!」
杏寿郎はふみのの威力に驚倒し、
思わず腰を引いた。
次の瞬間、
ふみのの木刀から
朱く、激しい火花が放たれた。
バチバチッバチッバチッ
バキッッ
それは爆竹のような激しい音を立てながら
二人の木刀を真っ二つに割ってしまった。
木刀は黒く焦げており
その匂いが、煙と共に辺りに漂う。
ふみのは何が起こったのかよく分からず、
あまりの疲労にその場に崩れ落ちた。
「ふみのっ!」
杏寿郎は、さっと駆け寄り、
ふみのの体を抱き抱える。
「ふみの!しっかりするんだ!」
「杏、寿郎…っ…。
私 全然、強く、なれないよ…っ」
ふみのの目から大粒の涙が
ぽろぽろと零れ落ちる。
「いや!ふみのは強くなっている!
最後の一振りは凄まじかったぞ!!
俺も耐えるのに必死だった!」
「………本当…?」
「ああ!きっとあれも、型の一つやもしれん!
要領を掴めば、新しい型も使えるようになる!」
励ましてくれる杏寿郎の言葉と笑顔が
ふみのの心を慰めた。
「今日はもうここまでにしよう!
ふみのに大分無理をさせてしまった」
「ううん。そんなこと、ないよ。
杏寿郎の言葉で、自分を見失わずに、いられたもの。
任務もあるのに、いつも、ありがとう…っ」
「案ずるな!ふみのの為にしていることだ!」
杏寿郎はふみのを抱き抱えて
家の中へ戻った。