火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第2章 一族の破滅
あの少年との出来事から数日後。
本家と分家で何か騒ぎが起きたらしい。
みちは心配そうに健蔵のことを気にかけていた。
分家の長男、一ノ宮徳廣(とくひろ)が
両親と掴み合いの騒動があったとのこと。
原因は、一ノ宮家の次期当主のことで
本家と分家で意見が分かれ、
腹を立てた分家と徳廣と両親達がもみ合いになったらしい。
「分家は今かなり気が立っている。
子ども達を分家の屋敷に近づけさせないように」
健蔵は普段は見せない険しい表情でみちに話し、
みちは心配そうに、話し合いに向かう健蔵を送り出した。
それをふみのは見ていた。
(分家の長男って、もしかして…)
思い出すようにふみのは自室に戻り、
アルバムを取り出す。
(とくひろ…そうだ、徳廣くんだ)
ふみのは先日会った少年の名前を思い出した。
会ったのも指で数えるくらいで、会話もほとんどしたことない。
違う、健蔵とみちが話させてくれなかったのだ。
思い出した。
小さい頃、季節の行事で徳廣に会った時、
ふみのが挨拶をしようと駆け寄ろうとしたら、
健蔵に止められたのだ。
『ふみの、挨拶はまた今度にしよう。
分家の皆さんは今忙しそうだから』
わかりましたと建蔵を見つめ、
状況がよく分からず、小さかったふみのは
健蔵の言う通りに、その場から離れた。
(…もしかして、徳廣くんと私には
関わってはいけない何かがあるのかしら…)
健蔵の姿を見えなくなるまで見送るみちに
自室から戻ったふみのはそっと話しかけた。
「かあさま、お聞きしたいことがあります」
はっと我に返ったようにみちは、咄嗟に笑顔を作り
ふみのに振り返った。
「なにかしら?」
「私は徳廣くんと関わってはいけない“何か”がありますか?」
みちの顔が一瞬驚いたように見えたが、
静かに微笑み、ふみのの目の高さに腰を下ろした。
「いいえ、何もありません。
ふみのは何も心配しなくて大丈夫ですよ」
本当のことを聞きたい。
みちが何かを隠していることをなんとなく察する。
「かあさま、私はもう子どもではありません。
大人の難しい話しも分かります。
お願いです。教えてください。
とおさまとかあさまに、私のことで迷惑をかけたくありません」