火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第6章 放たれた光
杏寿郎は一瞬目を見開き、
そのまま前を向いたまま、固まっていた。
ふみのは緊張のあまり、
杏寿郎の方を見れなかった。
「槇寿郎様に、助けていただいて、
杏寿郎達と稽古に参加するようになって、
私も誰かを助けたいなって、
自分と同じような目に合ってほしくないって、
思い始めて…」
杏寿郎は何も言わず、
口を閉ざしていた。
「杏寿郎がね、最終選別に行っている間、
光の呼吸のことを知って…。
もし何か知っているなら聞きた」
「それは本気なのか?」
「え…?」
遮られるように、
杏寿郎は今までに見たこともない険わしい表情で
少し俯きながら、ふみのに尋ねる。
(お、怒ってる…?)
「う、うん。本気だよ」
杏寿郎の表情の意味が読みとれず、
ふみのは困惑した。
「…その光の呼吸については、
以前父上から聞いたことがある。
あまり多くの隊士が使っていたものではないらしい」
光の呼吸について、
あまり良く思っていないようにも聞こえた。
杏寿郎の表情は変わらない。
「今のふみのでは最終選別どころか
基礎的な体力もほぼない。受けても鬼にやられるだけだ」
「そんなこと、わかってる!
だから次の最終選別までに体力もつけ」
「いや、無理だ」
「…っ、どうして?!」
「言っているだろう、その体力では不可能だ。
受けても自分を痛めつけるだけだ」
杏寿郎はふみのに冷たく遇らう。
ふみのは泣きそうになった。
「…っまだ、やってもないのに…っ?」
「……」
「そうしたら、明日、型を見て欲しい…。
それを見て、判断して欲しい」
「……わかった」
なぜ急に杏寿郎が冷たい態度をとったのか
ふみのは分からなかった。
ふみのは堪えた涙が溢れないよう
さっと立ち上がった。
「…そうしたら、私もう寝るね。
お休みなさい…っ」
「……ああ、お休み」
ふみのの頬に涙が伝う。
(……なんでそんな言い方をするの…?)