火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第6章 放たれた光
杏寿郎が最終選別へと向かってから
七日目の朝を迎えた。
ふみのと千寿郎は朝から、
門の前で杏寿郎の帰りを待った。
誰か人が通るたびに、
杏寿郎ではないかと見つめ、落胆した。
夕方になっても
杏寿郎は戻ってこなかった。
「兄上、遅いですね…」
「うん…」
心配の色を隠せない千寿郎は
必死に涙を堪えている様子だった。
ふみのも、杏寿郎に何かあったのではと
気が気でなかった。
その時。
道の向こうから、
びっこを引いて歩いてくる人影が見えた。
はっと目を見開くと、
それは杏寿郎だった。
気づいたら走り出していた。
「杏寿郎!!!」「兄上!!!」
ふみのと千寿郎は杏寿郎のもとへ駆け出し、
泣きながら抱きついた。
「杏寿郎…!よかった…本当によかった…っ!」
「兄上…よく、ご無事で…!!」
杏寿郎は、
抱きつく二人の頭をぽんぽんと撫でる。
「遅くなってすまなかった!
最終日、鬼から身をかわした際、
軽く足を捻ってしまった!」
「そうだったの…早く手当てをしなくちゃ…。
杏寿郎、私の肩に腕を回せる?」
「ああ、すまない、助かる!」
「俺、荷物を持ちます!」
杏寿郎が戻ってきてくれた。
杏寿郎の声が聞けた。
それだけで、こんなにも嬉しい。
(神様、母上様、お守りいただいて、
ありがとうございます……!)
空は、赤く染まり始め、
一番星が煌めいていた。
杏寿郎の生還に胸を撫で下ろし、
三人は揃って門をくぐった。